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第7話
「はぁ……」
誰もいない休憩スペースで一人、真翔はため息をつきながらコーヒーができあがるのを待っていた。こんなため息を仕事中にするものではないと思いつつも、どうしても抑えることができなかった。
優吾は午前中ずっと真翔につきっきりで業務に必要な様々なことを教えてくれた。あくまでも仕事、そう自らに言い聞かせるものの、かつての距離感を彷彿とさせて嫌でも昔のことが時折思い浮かんだ。楽しかった思い出だけならまだしも、好きという感情まで蘇ってしまいそうだ。
営業チームと会議のために優吾は真翔から離れていったおかげで、ようやく冷静さを取り戻せた気がする。
「……専門科目ばっかのときはシノに教えてもらってたな」
優吾の説明は要点が分かりやすい上に、疑問点は噛み砕いて理解をしやすくしてくれた。それは今も全く変わっておらず、チームリーダーに抜擢されたのも頷ける。
ピーッ、と、コーヒーマシンができあがりの合図を告げたところで、真翔は現実に引き戻された。使い捨ての紙カップを手に取ると、機械で淹れたとは思えない香りが漂ってくる。豆を挽くところから抽出してはいるものの、細部のこだわりは再現することが難しい。
真翔はバーのようなカウンター席に座りながら、再び香りを堪能する。鼻腔の奥深くまで突き抜けていく香ばしさは、挽きたてだからという以外にも理由がありそうだ。肝心の味は、とカップに口をつけてゆっくりと傾けていく。少し口内を湿らせてから舌に触れると、苦みと酸味が互いを邪魔しないバランスで広がっていく。真翔は思わずカップを見つめた。
「ほんと美味いな……」
改めて優吾の気遣いを感じられて、ドキリと胸が高鳴った。
一口ずつ味わいながらコーヒーを飲んでいると、誰かがやって来た。少し猫背ぎみの男性は、朝から隣にいる古谷だった。
「お疲れさまです」
真翔が声をかけると、ぼそりと呟くように声をかけながら頭を下げた。彼は仕事中も必要最低限しか会話をせずに黙々と開発する、一人だけタイプの異なる雰囲気だ。それ以外にも、真翔は古谷について少し気になるところがあったが、古谷は真翔のことを気にする様子はなかった。
古谷がコーヒーマシンのボタンを押すと、機械の唸るような音が響き渡る。真翔はコーヒーを飲みながら古谷にどう話しかけようか考える。
しばらくするとコーヒーは完成し、古谷はカップを手にしてスペースの端へ移動した。真翔はそれを見て立ち上がり、古谷の方へ移動する。
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