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第8話

「あの、古谷さん」 「……何ですか?」 「古谷さんから見て、シノってどんな感じですか?」  とっさに出てきた当たり障りのない内容は優吾についてで、真翔は口にしてどうしてだと思ってしまった。  だが、古谷は何ごともなく真面目に考えていた。 「そうですね。東雲さんは皆を開発に集中させてくれるリーダーです。調整上手くやってくれますし、困ったらすぐに相談できる雰囲気ですし、俺の本領が発揮できています」 「なるほど。だから古谷さんの担当部分ってソースコードも仕様書も芸術的にきれいなんですね!」  真翔の言葉に、ハッとした表情で真翔を見る古谷。一瞬地雷を踏んでしまった気がしたが、どうやら喜んでいるようだ。  午前中、優吾にチームで担当している内容を教えてもらっていたとき、明らかに書き方が異なる箇所があった。古谷が関わっていると言っていた部分なのですぐに分かったと同時に、真翔は目を惹かれた。真翔と思考が似ていると直感して、確かめたい気持ちでいっぱいになった。  すると、古谷は真翔と距離を縮めてきた。 「赤羽さんも分かります!? 俺、いかにスマートに裏側を作るかって意識してるんですよ。東雲さんにはOKもらってるんで徐々に置き換えとかしてるんですけど、他の人に理解してもらえなくて寂しかったんです」 「俺もまだ完全にできる気はしないんですけど、できるようになりたいですね。開発とかに入る段階になったら教えてください。……あ、ある程度は自分でも努力しますけど」 「もちろんです! いやー、理解してくれる人が増えて嬉しいです」  話しかける前とは別人と思えるほど、古谷は饒舌になっていた。真翔は驚きつつも、それ以上に自分と同じくらいの実力の人がいたことに喜びを感じた。不安しかなかったけれど、同じチーム内に話ができそうな人がいて安心だ。  心が軽くなりながらコーヒーを飲み進めていると、新たに誰かがやって来た。優吾だった。会議を終えてすぐにやって来たのか、手にはパソコンがあった。 「お疲れ」 「お疲れさまです」 「お疲れ……」  ニコリと笑いかける優吾に対し、真翔は反射的に顔を逸らせてしまった。優吾にとっては当たり前の表情かもしれないが、今の真翔にとっては眩しくてしょうがなかった。 「真翔、コーヒー美味しいでしょ?」 「お、おう……」  真翔の気持ちを知ってか知らずか、優吾は変わらず話しかけてくる。優吾は優しい、昔から知っていることだけど、今の真翔にとってその優しさは苦しいものだった。  もし真翔の中に後悔と恋心が一緒になければ、今のような状況でも普通に話せたのだろうか。  一瞬そんなことを考えたけれど、絶対に自分の意思は変わらないと現実を見つめ、コーヒーとともに奥深くへ流し込んだ。

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