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第9話
「じゃあ皆さん、行きましょう!」
コアタイム終了直後、岩本を先頭にチーム全員揃ってオフィスを後にした。
華の金曜日、出向とはいえ新しく加わった真翔を歓迎するために飲み会をすることになった。慣れない環境でだいぶ疲れていた真翔はすぐにでも家に帰ってゆっくり休みたかったが、皆予定を調整してくれていたので無下に断れなかった。
あまり乗り気になれなかったのにはもう一つあった。優吾の存在だ。初日から二人きりでの食事の誘いが何度もあったけれど、必要以上に一緒にいたくないのでなんとかかわしていた。たとえ他にも人がいるとはいえ、飲み会も正直なところ避けたかった。
真冬のビル風に身を縮こませながらオフィス街を抜けて、大きな通りを一本渡ると景色は一変する。様々な店が連なる賑やかな街になり、多くの人が行き交っている。そこからさらに繁華街へと向かい、飲み屋の連なる景色を眺めながら歩き続ける。金曜日ということも相まって社会人も学生も多くいてとても賑わっている。だが、雑居ビルが建ち並ぶおかげで真翔は再び寒さを感じた。
通りの半分ほどのところで岩本は、さらに一本脇道に入っていった。飲み屋があるとは思えない雰囲気とともに柔らかな光を放つ看板を掲げた店が現れた。
「こちらです」
「へぇー。今日はずいぶんとおしゃれなところだね」
「相変わらずいいところ知ってるね」
優吾も岡崎も感心しながら先に入っていく。岩本に促されて真翔も続く。狭い階段を下りているせいか、まるで秘密基地に向かっている気分になった。
ファーストラインテックのチームでももちろん飲み会はあるが、おしゃれとは無縁の男ばかりなので大衆居酒屋でざわざわとした喧騒に包まれる中での、華やかさとは無縁の雰囲気だ。それに対して、この店はまるでデートのときに来る店としてもふさわしい気がする。
席に案内され、どこに座ろうかと考えていると、古谷が真っ先に奥の方へと向かった。真翔は古谷の隣に行けばゆっくりと話せると思い隣に座るが、よくよく考えると三人掛けの真ん中のため、結局優吾が隣に来てしまった。森、岡崎、岩本の順に座る反対側を見ながら、動ける気配を微塵も感じられずに真翔は諦めた。
「今日は飲み放題コースなので、飲み物は自由に選んでください」
「何にする?」
優吾はさっとメニュー表を渡してくれた。あまりにも自然な動きに、真翔は反射的に受け取っていた。
「とりあえずビール。古谷さんはどうします?」
「同じで」
端末から全員分の注文を入力してしばらくすると、グラスで全員分の飲み物が揃った。
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