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第10話

 指が中にゆっくりと入っていくのを感じ、樹は涙を流しながら「嫌だ、やめてくれ」と訴え続けた。  中を擦るように動くたび腰がビクンと震える。角度を変えながら深く指が侵入していく圧迫感に恐怖が増す。その時痺れるような強烈な感覚が背筋を駆け抜けた。 「うわぁ――――あ―――っ」  がくがくと脚が震え喘ぎ声が途切れることなく漏れる。壊れた人形のように全身で悶えた。 「ほら、ここが感じる場所だ。また勃起してきただろ」と、樹の陰茎の裏筋を指先でそっと撫でた。  あまりの快感に全身に震えが走り、汗が噴き出す。終らない快感は拷問のようだ。多嶋は樹の竿の根元を握りしめ射精を抑制した。感じるポイントを指で執拗に擦られると、身体が溶けてしまうと思うほど熱くなる。全身が熱く痺れ、打ち上げられた魚のように体がビクンビクンと跳ね続けた。もう声さえ出せず、瞳から官能の涙を流し、樹は恍惚となった。強い快感の中に溺れていく。  樹がどういう状態なのか多嶋はよくわかっているはずなのに、更に樹を追い詰めるように、滴を溢れ出している先端を人差し指の腹で強く擦り始める。 「んんあぁ、だ、だめぇ――くぅぅぅっ」  口で荒い息をし、泣き声のような喘ぎ声をだし、押し寄せる快感に腰を振りながらとうとう樹は哀願した。 「イきたい。お願いイかせて。お願い―――」  多嶋が握っていた根元の力を緩め、シャツを捲り上げ、背中を舐めあげたとき、樹は全身を震わせ、多嶋の手の中に欲望を解き放った。  二度目の射精は断続的に続き、吐き出すたびに腰がぶるぶると震えた。樹は顔を伏せたまま息が整うのを待つしかない。全身がまだ快感の中から抜け出せず小刻みに震えていた。 「んぁああっ」  後ろの孔から指を抜きとられた衝撃でさえ震えるほどの快感が突き抜ける。多嶋は樹が吐き出した白濁の残滓を今度はそこに塗り込むように擦りつけ始めた。  そうされると今度は尾骨のあたりが疼きだし、羞恥とないまぜになり一気に体温が上がり汗が噴き出す。心臓はもう収集つかないほど激しく肋骨を打ちつけ、息をつく間もない。  多嶋が離れ、ベルトを外す金属がぶつかり合う音が聞こえる。衣擦れの音を聞きながら、自分は犯されるのだとぼうっとした頭でそう悟った。  悲観する気持ちも、怒りも何の感情もわいてこない。強すぎる快感に身体はまだ熱く、二度続けて射精した疲労でぐったりとしていた。  ぐちゅぐちゅと耳をふさぎたくなる卑猥な音が聞こえる。  顔を横にけると、多嶋がペニスに何か塗っている。 「ハンドクリームで愛用するしかない。これで滑りがよくなるはずだ」と言うと、多嶋は樹の腰を持ち上げ、先端を孔に押し付けた。 「うっく――――」圧迫感に息ができない。 「息を吐け、楽になれる」  素直に言うことを聞いた。息を吐いたと同時にヌルッと中に熱い塊が入ってくる。痛みはない。ただ圧迫感が半端ない。その状態で多嶋は慣れるまで動かず背中を優しくさすってくれている。 「早く終わらせろ―――」  羞恥と混乱で自暴自棄に叫んだ。  それでも多嶋はゆっくりと動き出し、焦らすように少し入れては後退し、また少し進んでは後退することを繰り返す。そのうちに激しい快感が突然やってきた。  感じる場所に当たったのだ。 「う、うあぁ――――」  ぎゅっと目をつぶり快感に耐える。 「ここがいいところだろ。もっと感じて悶えろ」   多嶋は樹の腰を両手で押さえると、執拗にそこばかりを攻めはじめた。 「う……ああっ―――っ、くぅ……いやだぁ――――そこいやっ、止めて!おかしくなる―――」  樹は無我夢中で体を震わせ哀願した。 「ああっ、お前の中すごく熱い。俺を嬉しそうにしゃぶってるみたいだ」  多嶋の低くよく響く声が腹の底にずしんと感じ、恥ずかしい言葉が、樹を悶えさせる。  多嶋が激しく腰を抜き差しし始めると樹は背中を逸らせ己の男根を掴んだ。そこはまた力を増し、先端からだらだらと涎を垂れ流している。樹は多嶋がしたように根元を握りしめる。  痺れが全身に駆け抜け、樹は狂ったように腰を振って快感を追った。 「気持ちいいか?樹」  名前を呼ばれ涙が溢れる。 「気持ち……いい。すごく……いい」  樹は夢中で解放の瞬間を探した。羞恥を捨て本能が求めるものに正直になれば、何がそこにあるのだろう?経験したことのない悦楽が待っているのだろうか?  樹は初めて知る愉悦の波に呑まれ、もう何も考えられなくなった。

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