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第15話

 自分の置かれた状況を受け入れ、慣れる。  樹の得意分野だ。そうやって、可もなく不可もなく今まで人生を送っていた。親友だった裕を傷つけ、裕から避けられ、連絡が取れなくなってもその状況を受け入れた。  仕方がない。と、諦めることは継続より簡単だった。  自分が熱い性格じゃないのはよくわかっていたし、だいたい何に対しても執着することがなかった。親友に告白され、その心を踏みにじってしまっても、仕方がないと諦め、状況を改善することさえしなかった。  今の自分も同じで、既に諦めていた。  いや、受け入れたのかもしれない。自分が男と寝ることを、男に悦楽を与えられることを、受け入れたのだ。こんな快感を知ったらきっと誰だって虜になるにちがいない。そう自分を正当化した。  そう、俺はもう虜なんだ。あの、強烈な快感の……多嶋とのセックスの虜。初めて夢中になったもの、それが多嶋とのセックスなのかもしれない。と樹は思った。  信じられないことに多嶋が欲しくてたまらないときがある。職場にいる時でも、ふと多嶋のことを考えると欲情してしまう。多嶋がいればなおのこと樹は多嶋から目が離せなくなる。あの綺麗な指が目に入ると更に体が熱くなった。あの指が自分の身体を弄り、快感を与えるのだと知っていては自分の恥ずかしい反応を抑えることは不可能に近かった。  3日間抱かれ続けただけで、このざまだ。身体が悦楽を欲して疼くようになってしまっている。多嶋が言うように声を聞いただけでなく、あの指を見ただけで発情してしまう身体にされてしまった。  樹は早く多嶋に会ってこの疼きを解放して欲しいとさえ思っていた。  樹の欲望は膨らむばかりで鎮まることはなかった。  家に帰ると多嶋がいる。  樹はその時をひたすら待った。  家に帰るとまず多嶋の靴を確認する。  ああ、来てる。  ほっとすると同時に、欲情してしまう。そんな自分をもう隠すことさえ諦めた。  リビングに入るといつものようにキッチンに多嶋がいる。樹は突進するように多嶋の腕に飛びついていた。  多嶋は目を見開き驚いたように樹を見つめたかと思うと、ぐいと引き寄せ唇を重ねた。痛いくらい強く吸われ、ぴりっとした痺れが背中を駆け抜け、尾骨のあたりがジンと疼く。樹から口を開け、舌を差し出した。  もう止められない。  自分が何を求めているのか、今はっきりとわかった。  多嶋が欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。狂ってしまいそうなほどの快感の中に沈めて欲しい。多嶋が我を忘れて自分を抱く姿が見たい。  樹は腕を多嶋の首に絡ませ自分からも引き寄せ、激しく淫らになるキスに夢中になった。何度も角度を変え、深く舌を絡ませあう。下半身に熱が集中し、痛いほどだ。だから、腰を多嶋の股間こすりつけるように動き挑発した。多嶋の手は樹の双丘を鷲掴み、強く引き寄せる。多嶋の昂りを感じ樹は嬉しくなった。  多嶋がキスだけで興奮している。それだけで樹は自信が持てた。  お互いの身体をぴったりとくっつけ擦り付け合いながら、舌を絡ませ合う。  樹は自分から唇を離した。  息が切れ、胸が上下に激しく波打つ。樹は多嶋を見上げ挑発的に唇を舐めた。多嶋が目を細める。その仕草が色っぽく、樹を更に欲情させる。  樹は首に絡ませていた両手を下ろし、多嶋のベルトに手をかけた。

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