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第16話

「今度は俺がする。あなたをイかせたい」  多嶋の困惑した表情を見て、樹は覚悟を決め多嶋の前に跪いた。下着ごとスラックスを下ろすと、形を変はじめている欲望の証は勢いよく跳ね上がった。それを手に取り優しく包む。  多嶋が息をのむのが聞こえた。男がどうされれば感じるか知っている。奉仕することが初めてだとしてもそれほど難しくないはずだと樹は思った。  ゆるゆると握りながら陰茎の裏筋を親指の腹でさするたび、硬さと大きさが増し、先端から透明な涙が溢れだした。樹はそれを舌で舐めとった。  多嶋の腰が震えると先端からどくどくと先走りが溢れ出す。口に含み吸い付いては先を舐めた。 「樹、奥まで、深く咥えろ」  ため息まじりに多嶋が言う。その声にぞくりと震えが走った。  言われたとおり、喉に当たるほど深く咥えこんだ。そしてゆっくり吸い付きながら抜いていく。  多嶋の切羽詰まった喘ぎ声に樹はさらに興奮させられた。夢中で男根をしゃぶりながら、陰嚢を手のひらで包み揺さぶり、陰嚢の裏側からアナルまでの道のりを指先で辿った。多嶋にされ、感じた場所を樹は同じように責めたのだ。  多嶋が唸り声をあげ激しく腰を使い始めた。喉に突き上げるように腰を使われるたび苦しさに涙が滲む。それでも樹はやめなかった。  多嶋の限界が目の前だと感じ取り、絶対に逃さないとでもいうように、両手で腰を強く押さえつけた。  両手で髪を掴まれる。喉から掠れた唸り声をあげて、腰を痙攣さたと同時に、熱い迸りを喉に感じた。むせ返りそうになるのを必死で堪え、多嶋が吐き出した液体を嚥下した。  ごくりと喉が鳴り、その音に羞恥が増し、耳から頬にかけて熱くなる。  多嶋がクスリと笑ったのを感じ、彼を見上げると、まるでよくやったと褒めるように、髪を鷲掴んでいた両手で頭を撫でられた。それがとても心地よく、もっと喜ばせて褒めてもらいたいという願望が芽生え始めた。 「俺はあなたのものだ。だから、俺だけ見て。俺があなたを癒してあげるよ。亡くなった恋人のことなんか忘れられるように……。俺だけを見てくれるなら、なんだってする。あなたが望むことならなんだって……」  感情のまま飛び出した自分の言葉が信じられなかった。縋り付くような感情に呑まれ考えるより先に言葉が出た。  亡くなった恋人のことを忘れて自分のことだけを見て欲しいという気持ち。それを自覚すると、何が何でも多嶋が欲しくなった。  樹は立ち上がると、自分から服を脱いでいった。  多嶋は何も言わない。何の返事もせずに樹を見つめ続けている。ふと我に返ってように、彼もスーツを脱ぎ始めた。 「俺をこんな風にしたのはあなただ。あなたなんだ」  だから責任を取れとでもいう様に、樹はその言葉をささやきながら、多嶋に抱き着き、猫のように首筋に顔を埋め鼻を擦りつけ、そして、舌で舐めた。  多嶋の息が熱くなる。両手で尻を鷲掴まれ、激しく揉まれると、尾骨のあたりがジンとし、甘い痺れが背筋に駆け抜ける。  ぶるっと震えると、熱が一気に男の欲望に集中し、ビクンとそれが揺れるほど力が増した。  ああ、たまらない、この体温も匂いも……多嶋のすべてが堪らなく欲しい。  お互い全裸で、体をぴったりと合わせ抱きしめ合っている状態で、体の熱が上がると同時に欲望にも熱が増す。ふたりの性器が重なり合い、多嶋に尻を揉まれるたびに腰が揺れ、欲望が擦れ合った。 「お前が欲しいのは俺じゃない。ここがもの欲しいだけだ」  アナルの入り口を指で擦りながらそう言われ、樹は腰を小刻みに揺らしながら、もう既に硬さを取り戻した多嶋の欲望に自分の一物を擦り続けた。 「なんだっていいよ。うっ……くぅ……早くやってよ」  多嶋の首に腕を回し抱き付きながら、首筋に舌を這わせ、腰を擦り付ける。尻を開くように掴まれると、入口を撫でていた指をぐっと押し込まれた。  ピリッとした痛みに悲鳴のような声が漏れたが我慢した。指を動かされていくうちに中が熱くなっていく。 「あ、あつ……い」  樹は片方の手を首から離すと、腰を多嶋の指の方へ押し付けるようにして密着している体を少し離した。そしてお互いの欲望を手で掴んだ。  完全に立ち上がっている自分の欲望の先端からは透明の涙が溢れている。多嶋のものと重ねて手で扱くうちに、息遣いが熱く荒々しくなった。 「うっ……くぅ……い、いきたい。多嶋さん……いきたい」  夢中で腰を振りながら熱が上昇するまま身を任せる。 「ふっ、樹、とんだ淫乱だな。こんなに欲望に忠実に乱れるとは想像もしてなかったよ」  多嶋の興奮と嘲笑を含んだ声に樹は潤んだ瞳を向けた。獰猛な視線とぶつかった。ぞくりと肌が粟立つ。  何か言う前に快感に支配された。多嶋の指がさらに奥に入り込み的確に感じる場所を刺激し始めたのだ。 「ひぃ……だ、だめ、だめだぁああっ」  びくびくと腰を震わせながら、欲望を握りしめる手の動きが勝手に速くなる。達することしか考えられない。 「ほら、もっといい声で啼いてみろ」  多嶋が激しく腰を振る度に、重なった肉棒が擦れる熱と摩擦が増す。その上、前立腺に与えられる指の刺激で樹の嬌声は止まらなくなった。 「あ、いやぁ、い、いれて、お願い。これでいかせてよ」  多嶋の剛直を握りしめ、欲情しうるんだ視線を向けた。多嶋が舌打ちし、樹の尻から指を抜き取ると、体を反転させた。  樹は自らテーブルに手を突き、尻を突き出させた。  多嶋が先走りを入口に擦りつけそしてぐっと腰を押し付けた。ずぶっと先端が押し込まれる快感に背中がのけぞる。  何度か入り口で行き来したそれは、一気に最奥を突きあげた。 「うあぁぁぁっ―――」  奥を突かれた痛みと強烈な快感で、樹は達した。白濁の液体が勢いよく飛び散る。  何度も奥を突かれると、視界が霞みちかちかする。  女のような甲高い喘ぎ声が止まらない。 「ぶっ飛びそうなほど気持ちいのか? 樹」  樹は何度もうなずく。返事をしようとしても喘ぎ声に変わるだけだった。 「もっと乱れてみろ。俺が欲しければもっと自分を解放するんだ」  多嶋の良く響く声にさえ感じてしまう。  樹は我を忘れるまま快楽に身を投じた。

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