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第19話

 身体の節々が痛く目が覚めた。白々と夜が明け始めていることを窓から差し込む優しい朝の光で知った。自分が床で眠り込んでしまっていたことに気づき、重い体を起こす。   泣いたせいで瞼が重い。  ガチガチに固まってしまった体を引きずって、樹はバスルームへと向かった。熱い湯に打たれると、全身が溶けるように弛緩していくのを感じ、心地良くなっていく。  ふぅーとため息が漏れた。  普段はシャワーを浴びるとしゃきっとするが、寝不足からか、脱力してしまい睡魔に襲われる。結局、シャワーを浴びた後、樹はベッドに直行した。  ああ、多嶋の匂いがする  そう感じたのも束の間、深い睡魔に襲われ、意識を失うように泥のような眠りに落ちた。  何時間眠っただろうか。目が覚めた時は、煌々とした光が部屋に差し込んでいた。  ああ、昼を過ぎているなと感じ、部屋の時計を見ると1時を過ぎていた。  昼過ぎまで熟睡したことなど数えるほどしかない。この何日間か多嶋に激しく抱かれ続けたことで体力を消耗し、昨晩号泣したことで疲れ果ててしまったのだと樹は悟った。  比較的、頭はすっきりしており、それほど気分は悪くなかった。  昨晩のすさんだ精神状態に比べればはるかにいい。前向きな気持ちになるのを自分でも感じていた。まず、今できることをしようと思い立つ。  部屋の掃除をし、シーツを変え、買い出しに行こうと決めた。多嶋が出張から戻ってくるかどうかはわからないが、いつ来てもいいようにしておきたかった。  夕食も作っておこう。  料理をすることはそれほど苦じゃない。ただ一人分だけ作るのも億劫で、帰宅も遅かったから必然とコンビニ弁当に頼っていただけで、誰かと一緒に食事するなら手料理を食べてもらいたいと思う。 樹はそうと決めるとベッドから飛び出した。  まずは部屋の掃除からと決め、それをしながら今晩のメニューを考える。  何にしようかなぁ  想像しながら掃除に取り掛かっていると、ジーンズのポケットに入れておいた携帯が振動した。急いで取り出し画面を見ると多嶋からだった。  心臓がドクンと大きく跳ね、ドクドクと早鐘を打ち始める。震える指先で、通話にするとがやがやと耳障りな雑音が聞こえてきた。 「多嶋さん?」 「樹、今新幹線の中。やっと解放されて帰れるよ。6時ごろにはそっちに行けると思う」 「うん。わかった。晩飯作って待ってる」  雑音にかき消されながらも多嶋の笑い声が聞こえ樹は嬉しくなった。  雑音の中に混じって多嶋が何か言っているがさっぱり何を言っているのかわからない。 「多嶋さん? 良く聞こえないよ。とにかく、今夜待ってるから……帰ってくるの、待ってるから」  そう言った途端通話が切れた。

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