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第8話 排除完了

そのせいか、俺が忠告したにも関わらず 詐欺罪として告訴されることになって会社にも懲戒解雇を言い渡されたらしい。 周囲から見れば自業自得の極みであり、同情の余地など微塵もない結末だ。 散々人を欺き、甘い汁を吸ってきたツケが最悪の形で回ってきたのだろう。 実に滑稽でざまあ無い。 胸の奥に燻っていたどす黒い感情が その無様な破滅によって綺麗さっぱり洗い流されるような、奇妙な高揚感さえ覚えていた。 ◆◇◆◇ その日の昼休み── 社内の食堂や廊下は、朝からその話題でもちきりだった。 誰もが声を潜めながらも、好奇の目を輝かせて噂話に興じている。 もちろん、すぐに俺の元に裕介が駆け寄ってきた。 少し早くなった足取りと、心なしか戸惑いを隠せない表情が、裕介の動揺を物語っている。 「ねえ快翔!歩美ちゃんの話聞いた…?」 上目遣いに俺の顔を覗き込んできた裕介の声は 周囲を気にしてかいつもより一段と小さかった。 「ああ、あれ?食い逃げで捕まって懲戒解雇なったんだっけ」 俺はあえて噂で聞いた風を装い、手元の缶コーヒーに視線を落としながら淡々と返した。 「そうそう!それで今まで僕以外にも食い逃げされて騙されてた人たちも大勢いたみたいだね…」 裕介は小さく肩を落とし、複雑そうな苦笑いを浮かべる。 騙されていたことへのショックよりも、その事実の大きさに圧倒されているようだった。 「裕介、失恋した直後にこんなこと知って辛いと思うけど…大丈夫?」 俺は覗き込むようにして、彼の瞳の奥をじっと見つめた。 裕介のためにしたこととは言えど 傷つきやすいこいつの心が、また脆く崩れてしまっていないか心配だったのだ。 「うーん…意外と大丈夫かな。ヤバい人だったって知れたし、恋は盲目ってやつかも?もう完全に冷めちゃったから」 そう言って裕介は、はにかむように笑った。 その笑顔には無理をした様子はなく、どこかすっきりとした潔さが感じられる。 「ふふっ、そっか。この前電話したとき、途中で切るから心配だったんだけど…吹っ切れたなら良かった」 張り詰めていた肩の力がようやく抜け、自然と笑みが溢れた。 あの夜に途切れた通話が、ずっと胸に引っかかっていたからだ。 「心配してくれてたの?それにしてはここ1ヶ月全然飲みにも行ってくれなかったよね…?」 裕介が拗ねたようにムスッとした顔を見せる。 不満げに尖らせた唇と 少し恨めしそうな視線が妙に熱を帯びていて、俺の胸をチクリと刺した。 「なに、俺がいなくて寂しかった?」 ふっと笑って、わざと揶揄うように言う。 いつもみたいに〝そんなことないよ!子供じゃないんだから〟とか 子供っぽいこと言うんだろうと思ったからだ。 いつもの小気味良いやり取りが返ってくるものと、完全に高を括っていた。

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