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第12話 無防備な小悪魔
耳の奥で自分の鼓動がうるさいほどに鳴り響く。
裕介の手が俺の指の隙間に滑り込んできて、深く絡まる。
酔っているせいか体温が高い。
普段よりも確実に熱い彼の肌が、俺の皮膚を通してダイレクトに熱を伝えてくる。
掌がじわりと汗ばんでいるのが分かる。
その湿り気さえも愛おしく、離したくないと思ってしまう。
羨ましそうに俺の顔を見つめてくる裕介。
少し潤んだ瞳と、無防備に開かれたパーソナルスペース。
その表情があまりにも無防備で愛おしくて、酒も相まって理性がプツンと切れそうになる。
このままこの手を強く引き寄せて、その唇を奪ってしまえたらどれほど楽だろうか。
「ねえ裕介……それ、わざとやってる?」
低く掠れた声で、探るように問いかける。
「え?なにが?」
キョトンとする裕介を見て、溜息が出そうになる。
本当に何も考えていないのだ、こいつは。
無自覚どころか、天然の小悪魔だ。
悪気がないからこそ、タチが悪い。
こいつは俺をどれだけ勘違いさせるつもりなんだか。
その無垢な瞳に見つめられるたび、俺の理性が崩れそうになるというのに。
「いや…なんでもない」
誤魔化しながらも、絡まった指を解けずにいる自分が情けない。
未練がましくその温もりを貪っている。
これ以上触れていたら、もう抑えが効かなくなる。
理性の堤防が決壊するのは時間の問題だった。
なんなら、可愛すぎてこの細い指も握り潰したいし
手のひらや指の隙間を舐め回して、裕介を困らせたい。
そんなキュートアグレッションが炸裂しつつ、ドス黒い愛欲が脳内を支配していく。
そう思いながらも、理性はまだ機能していた。
どうにかしてこの甘ったるい空気から脱出しなければならない。
「そ、それよりさ」
俺は強引に手を引っこめ、未だ手をつけていなかったマティーニの入ったグラスを手に持つ。
「ほら、さっき言ってたお酒。ひとくち飲む?」
裕介に見せるように少し傾けると、チリンと冷たくて高いガラスの音が、静かなバーの空気に小さく響いた。
その澄んだ音が、微かに俺の理性を現実に引き戻す。
コクリと頷き、裕介は俺の方へ体を寄せてくる。
ソファの上で身体が擦れる音がやけに大きく聞こえた。
距離が更に縮まり、ゼロ距離に。
お互いの肩と太ももが完全に密着し、逃げ場のない熱がそこに生まれる。
アルコールの香りと裕介のほのかな石鹸のような匂いが混じった温もりが鼻先を撫でた。
こいつの匂いを嗅ぐだけで、頭の芯が痺れるように熱くなる。
「じゃあ…」
軽い調子で言いながら、俺が持つグラスに顔を近づける。
その仕草があまりにも無防備で愛おしくて
今すぐ抱きしめてしまいたくなる衝動を必死に押さえ込んだ。
差し出された細い首筋や、少し開いた唇が目の前に迫る。
裕介がグラスのふちに唇をつけた瞬間
喉が小さく上下する。
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