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第14話 劣等感ごと抱きしめて

酔いに任せて好き放題語られる恥ずかしい評価に、照れるよりも困惑が勝る。 一気にまくし立てられた褒め言葉の嵐に、顔が熱くなるのを感じた。 「さすがに褒め過ぎだって」 思わず苦笑いを浮かべつつ、裕介の勢いに圧倒されるばかりだった。 普段は口にしないような本音が、アルコールの力を借りて溢れ出しているのだろう。 しかし次の言葉で、空気が一変する。 「だから、快翔って…僕より、もっと他の人といたいのかなって……」 先程までの熱量とは裏腹に、声色が沈むように変わり、僅かに震えが含まれていた。 楽しげだった室内の空気が、一瞬で張り詰める。 「裕介?」 「だって、いつも助けられてばっかだし…1年目の頃から周りにも言われてきたでしょ…?『快翔の引き立て役』って」 伏せた瞼が長いまつ毛を揺らし、不安げな影を落とす。 居心地が悪そうに視線を彷徨わせるその姿に、胸が締め付けられる。 「『快翔くんの足引っ張ってる』とか『あんたらって光と影だね』とか……」 一言一言絞り出すたび、拳を膝の上で握り締めるのが見えた。 爪が食い込むほど強く握られたその拳が 裕介がこれまで抱えてきた劣等感の深さを物語っている。 「…そう思うと、快翔にとって、僕って一緒にいる意味ないんじゃないかなって……」 声が震え、最後は消え入りそうに小さくなっていく。 自分なんていなくてもいいのではないかという 深い孤独と不安がその小さな背中に滲んでいた。 俺はしばし言葉を失い、真剣な眼差しで裕介を見つめた。 こいつがそんな風に思い詰めていたなんて、夢にも思わなかった。 周りの雑音を真に受けて、一人で傷ついていたのだ。 そしてゆっくりと口を開く。 「裕介」 名前を呼ぶと、ハッと顔を上げた彼と目が合う。 怯えたような、泣きそうな目。今にも涙が零れ落ちそうな、壊れ物を惹きつけるような瞳。 伝えるべき言葉は、最初から決まっていた。 「そんなこと……一瞬でも考えんなよ」 静かだが、強い口調で告げる。 こいつの弱気な妄想を、力尽くで否定したかった。 「俺は裕介と酒飲んだり愚痴言い合ったりする時間も好きだし、一緒にいる意味なんて考える必要もないくらいに俺にとっては当たり前なんだよ」 ゆっくりと右手を伸ばし、裕介の手をそっと包む。 膝の上で固く握られていた拳を、優しく解くようにして包み込んだ。 「それに、裕介が泣きついてくるのも俺だけがいいって思うし、俺には裕介が必要不可欠だからなんだよ?」 伝わるように、真剣な面持ちで告げた。 俺の心からの本音だ。 裕介以外の誰も、この場所には座らせたくない。 俺の言葉を聞いた裕介は目を大きく見開き、まるで信じられないという表情を浮かべた。 心の奥底にある不安を綺麗に拭い去るような言葉に、衝撃を受けたのだろう。

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