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「な? 来てよかっただろ?」
見送りに門前まで来てくれた政宗の隣には、柴犬のインプリ・ペット「小鉄」を抱いた弟が明るい顔で立っている。
「うん、よかった……俺もすっごく飼いたい」
弟はいっそう笑顔になっている。あわせて柴犬も大きく尻尾を振りだした。
政宗のおかげで、憧れのインプリ・ペットの実物を目にすることができた。膝の上へのせてもらうとあたたかみもちゃんとあるし、まるで生きた犬に近い感触もある。
政宗の弟が指示を出すと、おとなしく紅にも撫でられていた。宣伝文句のとおり、主に心底懐いていうことを何でもきく。
「いつでも会いに来てもいいよ」
政宗の弟も優しくそう言ってくれた。インプリ・ペットの性格は、飼い主に近く設定されるのかもしれない。
「ありがとう、じゃあまた月曜な」
礼を言って政宗の家をあとにし、最寄りのバス停へと向かっていく。
「はぁぁ……」
細い路地を歩きながら、大きなため息がもれた。
無条件に自分のことを受け入れて、信じて懐いてくれる存在がいたら、どれだけ心が安らぐだろう。
(政宗の弟は小鉄に救われたんだろうな)
政宗の弟は不登校ぎみだったらしい。けれど小鉄がやってきたことで家での会話が増え、外へも出かけるようになったと聞いた。
飼い主のありのままを受け入れて、心を包み救ってくれる存在に思えてならない。
「人間相手じゃそうはいかないよな」
インプリ・ペットに憧れはあるものの、それでもやはり恋人には憧れる。
自分をわかり全てを受け入れて愛してくれる、生身の男性を見つけることができたらと思ってしまう。
(だけどもう失敗したくない。傷つくのわかってるし)
けれど、それを求めてはまた高三のときと同じ過ちを繰り返すだろう。理解してくれたと思っても、勘違いだったらやりきれない。
なので、自分にはインプリ・ペットがちょうどいいのだ。
生身の人には求めず、自分をわかってくれる存在を好きなだけ大切にして気持ちを治めたい。
(今すぐお金貯めて買えばいいのに。何でしないんだろうな)
インプリ・ペットに依存して、大学に行かなくなることを、無意識に警戒しているのかもしれない。
何も行動しないまま、ただ愛することを我慢して自分をはぐらかし続けている。それはわかっているけれど。
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