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バス停に到着した紅は、まもなくやってきたバスに乗ると、最後列の座席へ腰を下ろした。
大学進学にあたって、紅は実家を出てひとり暮らしを始めた。
もともと紅は実家から通える進学先を探していた。けれど、高校三年のとき、好きだった友人がひとり暮らししたいらしいと知り、進路をこっそり真似た。
(ひとり暮らし同士、行き来できたらとか、考えててほんと俺って愚か……)
紅が告白したせいかはわからないけれど、試験の当日、志望校の試験会場に彼の姿はなかった。
告白以来、元友人とはまったく話さなくなっていて、結局真相はわからないままだった。
(きっと俺のせいだよな)
車窓から、夕陽がしずんでいく、オレンジ色に染まる景色を眺めながら、もう何度思ったかわからない後悔がまた始まる。
家へ向かうバスは川沿いの道路を走っていて、その景色が高校時代に見たものとそっくりなせいだ。
停留所に到着したバスが、待っていた乗客を乗せ始めた。川にかかる橋を眺め、高三の頃拾った黒い犬を思い出す。
(クロ、無事だといいな)
振られた日に拾ってきた黒い大型犬は、飼い主を探し始めてすぐいなくなってしまった。名前をつけては愛着がわくのでよくないと母には言われたけれど、こっそりつけてかわいがっていた。
姿を消したあの夜、クロのいた実家のリビングは窓ガラスが割られ、荒らされていた。警察に通報してクロのことも伝えたけれど、犯人は捕まっていないしクロも見つからないままだった。
「?」
川岸の草むらの中に、銀色の光の点滅が見えた気がする。
運転手はまだ乗車する客の対応をしている。
紅は目をこらして見ると、再び光の点滅が始まった。
(助けないと!)
クロを拾ったときの感覚に似ていて、なぜか救いを求められている気がした。
確かめずにはいられない。しかし、バスの扉が閉まり、動きだしてしまう。
「すす、すみません! おります!!」
震えながらも大声を懸命に出すと、運転手は快く対応してくれた。ありがとうございますと乗客へも含めてあいさつすると、降車口から飛び降りた。
橋の下を、紅の腰あたりまで高さの枯草が覆っている。春の初めで背の低い雑草が若い緑を広げ始めていた。
枯草の隙間で銀色の光の点滅は続いていて、紅は草の間を急いで進む。
「こ……これ、まさか……」
たどりついた光源には、大きな卵が眠っていた。両腕で抱えられるくらいのサイズだ。
抱き上げるとまるで紅が来るのを待っていたかのように、光の点滅はすぐに消えてしまった。
インプリ・ペットの出荷時の状態にそっくりだ。先ほど政宗の家で、何枚もの写真を見せてもらったので、実感がある。
(誰かの落とし物か?)
配送で届くインプリ・ペットの卵は、厳重に梱包され、注文者のもとへ届くといわれている。それに高額な商品なので、簡単にそれも中身だけ落とすとも思えない。
「まさか、捨てられたのか?」
購入してすぐ捨てるとは考えにくいけれど、紅は手にした卵をさらに強く抱きしめてほおずりしてやった。
(とりあえず持って帰って、明日警察へ届けるか)
憧れの存在を一晩だけそばに置いてみたくなった。
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