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「っ!!」  あわてて紅が目をさまして壁掛け時計を見ると、深夜二時を回っていた。いつのまにか横寝になっていたけれど、あたたかな卵は抱きしめたままでベッドからも落ちてはいなかった。 「あっぶなかった……」  胸の上の卵を確認しても孵化する様子はなく、紅は胸をなでおろす。  人様のインプリ・ペットを勝手に孵化させて、弁償しろと言われてもそんな金はないので困ってしまう。  再び眠ってしまわないよう、インプリ・ペットの卵をベッドの端へ置こうと体を起こした。  ピシピシ 「?」  ベッドの上で卵にヒビが入り始めた。このままでは孵ってしまう気がした。  懸命に割れていく殻をとじさせようと、慌ててヒビを両手で押さえ力を込めた。  けれどまったく意味がなく、亀裂は全体に広がっていく。 (まずいまずいまずい!)  焦ると同時に、自分だけを愛してくれる存在が生まれる期待も同じだけ大きく膨らんでしまう。  卵中央へきれいに亀裂が入ると、紅は好奇心と期待に負けて殻から手のひらを離した。  真っ二つに割れた大きな卵の中から、真っ黒な犬が飛び出してくる。 「えっわっ……お前!?」  クロを拾ったときは大型犬サイズだったので、比べるとあまりに小さい。けれど、数日だけ一緒に過ごした拾い犬のクロにそっくりな犬が膝の上にのっている。  胸へ両前足をかけてよじのぼると、紅の顔をぺろぺろと舐めだした。友人に振られた重くて苦しい日を紛らわしてくれた、クロに姿がそっくりだ。 「っ、待てって、くすぐったい、クロ」  言うと、わん、と鳴いて尻尾を振る。本当にクロが帰ってきたと思ってしまう。  明るく照らされた室内、目の前には真っ黒でくるんとした毛が特徴的な犬が、ちぎれんばかりに尻尾を振っている。  拾ったクロはカーリーコーテッドレトリバーに似ていたが、孵化したばかりのインプリ・ペットは、そのまま小さくしたような姿だ。 「お前、持ち主のことなんてわからないよな?」  再びわんと鳴き、嬉しそうに目の前で跳ねている。しかし、持ち主がわかったとしても、無断で孵化させてしまいましたといって返す勇気はない。 「……このまま、俺のとこにいちゃうか?」  小声で尋ねてみると、孵化したばかりの黒い子犬は尻尾を振って飛びついてきた。

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