10 / 33
2-2
紅が大学やバイトへ出かけている間、クロは大人しく部屋で待っている。
帰宅すると、玄関まで走ってやってきてめいっぱいじゃれてくる。この瞬間が毎日楽しみで、家路を急いでしまう。
「ただいま、クロ。今日は何してた?」
日に日に成長するクロはもう中型犬くらいのサイズになっていた。持ち主からの連絡もない。
玄関で体当たりのようにじゃれられると、孵化したばかりのときよりも抱き止めるのが大変だ。けれどそれすら嬉しかった。
(あったかい)
全身で愛情をぶつけられた気がして、紅は心が満たされる。
高三のとき拾ったクロにも傷心を慰めてもらった。今もそっくりな存在に懐いて必要とされている。ひとりでいようと決めたけれど、どこか消えなかった寂しさは薄らぎつつある。
社会人になったら、貯金してインプリ・ペットを買おうと思っていたけれど、もうこのクロのような黒犬がいたらいい。
「今日の夕飯は、オムライスにするからな」
インプリ・ペットは専用のエサもなく、人と同じものを一緒に楽しめることも魅力のひとつ。この黒犬も同じだった。
両親が忙しかったこともあり、紅は実家で自炊の経験があるので、簡単な料理なら作れる。けれど、食べてくれる相手がいる料理は作る楽しさが違った。
「わん!!」
抱えていたクロを下ろし、靴を脱いで部屋へ入る。その間もクロは、足元をまとわりついてくる。
本当に紅のことが好きで、ずっとそばにいたい。そんなじゃれようだ。それがもしプログラムによることだとしても、紅は嬉しくてたまらなかった。
ともだちにシェアしよう!

