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食事の片付けがすんだあと、紅は帰りに買った首輪を取り出す。
「何、それ?」
「クロにあげるつもりだったけど、いらなくなっちゃったな」
言葉で意思疎通できることがわかったので、ドッグランへわざわざ行かなくても、好きに走り回らせてやれる。首輪とリードで制限する必要もない。
首輪を選んでいたときの高揚感を思い出し、紅は苦笑する。
「……俺にくれるの? 紅が買ってくれたの!」
クロは目を丸くし、顔中が一気に明るくなった。
「そ、そうだけど……」
「嬉しい、ありがとう! つけて!」
長く銀色をした尻尾が、ぶんぶんと勢いよく左右に揺れている。
クロのためにと選んだものを、大喜びしてもらえた。
紅はつい嬉しくなり、商品タグを切り離すと、赤い首輪を首元へつけてやる。
「でも人間は首輪しないから、犬の姿のときだけでいいんじゃないか?」
すると、クロは大きく何度も首を横に振る。
「いやだ、紅がくれたんだ。ずっとつけてる!」
大型犬用の首輪なので、人の首にはめても余裕がある。
(そういうファッションって、見方ができなくも……ないか?)
あまりに無邪気に喜ぶクロから奪い取るのもかわいそうだ。
けれどリードも見せるとそれも欲しいといわれそうだ。さすがに人の姿にリードをつけて引くことはしたくないので、バッグの中へ隠したままにした。
「紅!」
「わぁっ!」
はしゃいで覆いかぶさってきたクロに、紅はカーペットの上へ押し倒されてしまった。首へ腕を巻き付けられながら、クロからのキスを受ける。
「ちょっ、くろ、こら!」
「嬉しいとね、たくさんキスしたくなっちゃうんだ」
頬へ額へ、軽い口づけが何度も降ってくる。
(何か……犬のときのと変わらない…?)
そう思っていると、頬をべろりと舐められ、今度はほおずりをしてくる。
「紅、大好き……ありがとう」
「うん……そんなに喜んでくれて、嬉しいよ…ん?」
キスの雨がやんだと思ったら、クロがやけに静かになった。紅を抱きしめて離さないまま、静かに寝息を立てている。
「大人になったんじゃ、なかったのか?」
子犬の頃と変わらない様子に安堵した紅は、そのまましばらくクロの寝顔を眺めていた。
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