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 バイト帰りの深夜、雨が降っていた。街路灯の少ない路地は人がほとんど歩いておらず、寂しい。  けれど、家ではクロがあたたかい食事を用意して待っていてくれる。クロが人化できるようになってから、家事を任せきりだ。 (俺より家事全部、上手なんだよな。どういうとこで生きてたんだろ)  卵は紅の手で孵化させたのだし、前世の記憶とでもいうものか。それなら前に拾ったクロからして、普通の犬ではなかったことになる。  傘をさしながら路地を歩き、横断歩道を渡ろうとする。ほとんど車どおりもない道なので、軽く確認して渡り始めた。 「あぶないっ!!」  聞き慣れた声と共に体を抱えられ、渡り始めた横断歩道から押し戻される。傘は持っていられず、離してしまった。  さっきまで見えなかったトラックが、無灯火のまま道路をものすごい速さで走り去っていく。  紅の傘が轢かれてぐしゃりと曲がり、転がった。  使えなくなった傘を見て実感がわいてくると、背筋が凍り手が震え出す。 「大丈夫!?」  助けてくれたのは、クロだった。見上げると、眉間にシワを寄せ眉尻を下げ、泣きそうな顔をしている。 「ケガしてない!?」 「うん、大丈夫……びっくりしただけ」  横断歩道を渡る前に確認したけれど、甘かったのかもしれない。クロが待っていると思うと、心が浮かれて早く帰りたくて、トラックが見えていなかった可能性もある。 「ちゃんと見てなかった俺が悪いんだ。ありがとう」 「いつも、迎えに来ていい? 心配なんだよ」  雨の降るなか、強くクロに抱きしめられる。 「今度はちゃんと気を付けるから。家で待っててよ、な?」  不満げなクロの頭をまだ震える手で撫で、手を繋ぎたいというクロの希望に応えて帰った。

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