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しかし、その日だけではすまなかった。
大学では階段で背後から突き落とされかけて政宗に助けられた日があった。今日はバイト中には刃が出たままのカッターナイフが飛んできて、腕を切ってしまった。
小さな事故を含めると、毎日何度も何かが起きる。
クロと暮らす幸せをもらった分かと考えるけれど、関係がないと思いたい。不幸をクロのせいにはしたくない。
「どうしたの、その腕! ケガしたの!?」
ケガをしたのでバイトを早退させてもらった。帰宅すると、玄関へ飛んできたクロの顔が歪んだ。
「ちょっと失敗しただけだよ」
バイト先で手当をしてもらったところ、大げさに包帯を巻かれてしまった。
「ケガするとこなんて、行かないでよ」
「たまたまだから、大丈夫だよ」
すると、クロに両肩を掴まれた。顔がぐっと近づいてくる。
「紅に何かあったらイヤだよ! この前だって車に轢かれそうになってたよ!」
「あれも俺の不注意で…」
肩を掴まれたままクロが首を横に振るせいで、こちらまで体が揺れてしまう。
「じゃあ、紅のボディーガードする!」
「え……?」
「俺だって大人になったんだ。まだ人になれるだけだけど、ずっとそばにいて紅を守りたい!」
まるで告白にもとりたくなる、まっすぐな言葉を放たれて、紅は胸が一気に熱くなる。
(誰かにこんなことを言われるの、初めてだ)
守るといわれ、どこかの姫のような気分になる。あまり悪くはないけれど、自分は男だしかわいいクロを守ってやりたいのは紅の方だ。
「紅とまた離れ離れになるの、イヤだよ…」
強気なことを言ったくせに、クロはぽろぽろと涙をこぼしている。勝手に泣きだしたのだけれど、紅は自分が泣かせた気になってしまう。
「わかった、わかった。じゃぁ、出かけるときはついてきて」
「うん! 学校もバイトも全部行く!」
「さすがに全部はなぁ……。耳と尻尾は隠せるのか?」
袖口で目元を強く拭い、クロは困ったような顔をする。
「がんばれば、できる……」
そう言いながらも視線を紅からそらし、天井の方を見ている。
「できない感じだな?」
「うっ……」
紅の両肩から手を離し、頭の上の耳を押さえてどうにかしようと頑張っている。
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