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「やっぱり普通の犬じゃなかったんだな」  紅はクロの瞳を見て、じっと聞いてくれた。  話し終えて、ずっと聞きたかったことを尋ねてみる。 「あのとき紅は、どうして悲しそうだったの?今も?」  すると紅は、優しく笑って頭を撫でてくれた。 「なんかすごい話だったけど、クロは俺といたいってことで……合ってる?」  首をかしげて、頬を薄く染めながら聞く紅がかわらしく見えてしまう。 「うん、そうだよ! 俺はずっと紅といたい!」 「……なら、もう悲しくないよ」  思わず飛びついて強く抱きしめてしまった。  自分がいることで紅が悲しくなくなった。それが嬉しくてたまらない。 「わっ、待てって」  言葉では抵抗しながらも、抱き着いたクロを受け入れて、背中に手を回してくれた。 「きっとロリサは紅を狙ってるんだと思う。とってもきれいだから」 「そ、そんなことないって、てか男なのに?」 「きれいかどうかに性別なんて関係ないよ。紅の肌は白くてすべすべしててきれいだし、唇は赤くてツヤがあって、やっぱりきれい」 「や、やめろって、何だよ」  紅の顔じゅうが、赤く染まる。  白い肌が朱に染まるととても色っぽくて、クロはドキドキしてしまう。  地獄の魔女は人間でも動物でも植物でも関係なく、美に役立ちそうなものを収集させていた。紅をどこで見つけたかはわからないけれど、狙われている可能性は高い。  クロは腕を離し、今度は紅の両肩をつかむ。びくりとした紅が目を丸くしながら、見上げてくる。 「紅のこと、もっと守らせて欲しい」 「クロ……」  目を細めた紅は、瞳が潤んでいっそうきれいだと思う。きれい以外の言葉でも表したいけれど、うまく言えない。 「紅がいなくなっちゃうの、絶対いやだから!」  すると紅は眉尻をさげたあと視線を伏せた。クロは、悪いことを言ったかと心配になる。 「あっあっ紅、ごめんね、俺っ」 「……俺だって、クロといられなくなるのいやだよ」 「!」 「でも守られてばっかりもいやだから、俺もちゃんと気を付けるし、クロの力になりたい」  全部任せて頼ってくれればいいのに、紅の姿がいじらしくて、思わず両肩をつかむ手に力が入ってしまった。 「っ…クロ、手、強い」 「紅、好き、大好き! ずっと好き!」  思わず溢れてしまって、何度も繰り返し言う。もっと確かな言葉で伝えたいけれど、好き以外思いつかなくて繰り返してしまう。 「……あ」  紅の目尻から、涙が一筋こぼれた。泣かせてしまって悪いと思い、その一筋をぺろりと舐めてクロは励まそうとする。 「ふ……くすぐったい……」  泣きながら笑っている紅は、どういう気持ちなのだろう。 「俺だって、クロが好きだよ。だから、守られてばっかりはいやなんだ」  紅の両手がのびてきて、頬を包まれた。あたたかくて柔らかい、紅の手のひらだった。  感触にうっとりしていると、顔が近付いてきて唇にもあたたかさと柔らかさが一瞬訪れる。 「……え?」 「……いやだった?」  一方的にクロが紅の顔や手を舐めてじゃれることはあったけれど、唇へは意識して避けていた。 「キ、キスは……好きな人とする、んだよ?」  クロは、考えがまとまらず、とりあえず言葉をつなぐ。 「……だから、したんじゃん」  紅の白い頬が真っ赤に染まっている。文句を言いたげな顔がまた、かわいらしい。  紅からキスをしてくれるなんて、思いもよらなかった。高揚が止まらず、ますます膨れあがってくる。 「もっかい、していい?」 「……うん」  目を閉じてこちらに顔を向けてくれる姿が、たまらなく愛おしい。できるだけ勢いに任せないよう、静かにそっと紅と唇を合わせた。

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