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6-1
アパートの部屋の鍵を開けていると、クロが握ってくる手の力が強まった。開錠してクロの顔を見上げると、呼吸が荒くなっている。
「……」
ふたりとも何も言わず、部屋へ入る。
そのまま玄関で、と覚悟もしたけれど、クロはキッチンへ進みスーパーで買った物を冷蔵庫へ片付けている。
(我慢してくれてるのか?)
紅があんなキスは初めてと言ったせいで、手を出してこずにいるのなら悪い。紅ももっと先へ進みたいと、伝えなくては。
「クロ……」
先に奥の部屋へ進み、ベッドへ腰かけてみる。いったんローテーブルの方へ行くか迷ったけれど、ベッドを選んだ。
「お……お風呂、入れるね」
片付けを終えたクロが顔を出し、小さくびくりと反応したのが見えた。ベッドで待っている意味がわかったのだろうか。
クロの人の姿がかっこいいと褒めてから、ほとんどの時間を人型で過ごしている。けれど、眠るときだけは犬の姿になり部屋の隅で丸くなっていた。
クロのあとで時間をかけて入浴を済ませ、紅が部屋へ戻ってくるとクロは既に黒犬の姿になっていた。
「……今日は一緒に寝ないか?」
首を起こしたクロが目を丸くしている。言いたいことが伝わっているといい。
「………わん」
ベッドへ横になると、すぐに人の姿へ変わったクロが、紅のすぐそばへゆっくりと寄ってくる。
「……いいの? 狭いよね?」
「ううん、大丈夫……来て」
壁の方へ寄り、薄い掛布団をめくって招くと遠慮がちにクロが上半身だけ入れてきた。
「でもね、一緒に寝たら……我慢できなくなりそう」
クロの精通は紅が手伝ってやった。あれ以来自分で処理しているらしく、求められることはなかった。
クロが自分から別々で寝ると言い出したのは、そんな理由からだったのだろう。気遣いが嬉しいけれど、今はいらない。
紅はクロを子供だと思っていて、精通の手ほどきに罪悪感があった。けれどもう、違う。
「我慢、しなくていい」
じれったいので、クロの手を強く引っ張る。するとクロはようやく入ってきてくれた。
シングルベッドなので、男二人並んではやはり狭い。
互いに横寝になって、紅はクロの胸に頬をつける。体の前面を密着した状態で、クロの腰あたりが気になった。
「うぅ……」
頭の上でクロの唸り声がする。呼吸も荒い。
自分は受け入れる側の方だと、紅は以前から思っていた。誰かとすることに興味もあるし、ひとりでしたこともある。クロと進展してもきっとできるはずだ。
とはいえ、怖くないわけではない。
「紅」
頭からすっぽりと、クロに抱きしめられた。胸へ耳を押し付けられ、衣服越しのぬくもりとともに速まる逞しい鼓動が聞こえる。
安心させてくれる温度と音だ。安らぎをもらうだけではなくて、もっと深くクロとつながりたい。
「紅が嫌なこと、したくないよ。でももっと紅に触りたい」
「うん」
すると背中に回ったクロの手が離れ、起き上がったクロに仰向けにされた。
「……」
何も言えずにいると、脚の間へ割って入られた。覆いかぶさってきたクロをおそるおそる見る。
眉間にシワを寄せ、苦しそうに頬を染めている。必死な様子がかわいらしい。
紅の顔の両側へ手をつかれ、徐々にクロの顔が迫ってきた。
求められて嬉しい。
紅はシーツを握りしめて、降ってくるであろうキスに備える。
「紅」
掠れた声で呼ばれたあと、ふわりと軽く優しいキスをされた。クロの甘くて優しい声が響くと、耳から背筋を伝って腹の奥まで届き、疼きだす。
何度もついばむキスを受けると、クロの体が離れていった。
(これだけで終わり?まだ…)
寂しくなって固く閉じたまぶたを開けると、眉間にシワを寄せて荒い息を繰り返すクロが衣服を脱いでいる。
欲のこもった低い声が、静かに響く。
「紅……全部、俺にちょうだい…」
脱いだ上半身は、引き締まっていて筋肉の隆起がはっきりと見えた。
急に大人になってしまったようだ。心なしか、声も低くなった気がする。
困惑しつつも、クロの体と声に胸がますます切なくなってくる。
「………」
ぎこちなくうなずくと、前開きのパジャマのボタンへ手がかけられた。恥ずかしさで見ていられず、また目を閉じてしまう。すると同時に頬へ優しいキスが落ちてくる。
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