35 / 43

7-1

「誕プレ買うつもりだったのに、あの日は大変だったよな」  翌日、いつもどおりクロと一緒に大学へ出かけると、政宗に声をかけられた。 「お前がいなかったら危なかった。ありがとな」  クロに礼を言って、笑いかけている。今までクロの存在に疑いがあったようだけれど、とりあえず認めてくれたらしい。 「遅れちまうけど、また買いに行こうな」  次の講義は政宗と別なので、廊下で分かれる。 「誰の誕生日なの?」 「あー、俺のだよ」  あえて言うこともないと、クロには教えていなかった。 「えー! 言ってよ、ちゃんとお祝いしたい! いつ? いつなの!」 「……今日」  正直に言うと、クロは眉尻を下げて大声をあげている。 「じゃあ今日はお誕生日祝いだよ、夕飯!」 「あ、ありがと。じゃあ、楽しみにしてる」  どうにか口角をあげ、ばれずにすんだ。クロがスマホを貸してとせがむので、渡すと誕生日レシピの検索に夢中になった。  次の講義はクロは教室へ入れないので、このまま通路のベンチで待ってもらうことにした。 (今日で二十歳か)  魔女は誕生日を知っていて持ち掛けてきたのだろうか。二十歳になって何が都合がいいのか、紅にはわからない。  クロには申し訳ないけれど、誕生日料理はきっと無駄にしてしまう。  紅を待つ間、クロはいくつものメニューをチェックしていて、どれがいいかと聞かれた。 「今日は悪いこと、起きなかったね?俺が火を吐けるようになったからかな!」  拳を握りながら、嬉しそうにクロが言うので、紅も笑顔でうなずいておく。 「そうだな、頼りにしてるよ」 「え? うん! 任せて」  今夜ロリサとの約束を果たすためだ。自分の意志でやってくるのなら、もう手を出さないと言われていた。  授業後、誕生日祝いのために買い出しをしたいというクロとスーパーへ寄る。  食材の買い出しも手慣れたもので、手際よく品物を入れていく。  楽しそうなクロを尻目に、紅は黙ってスーパーを出ると、約束の場所へ向かった。

ともだちにシェアしよう!