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第9話 思い出

「夕子もこの手で抱いたのね。 私がリキに惚れてるって知ってたのに 夕子は横取りしたのよ。」  もう10年以上前の事だ。夕子はそんな女だったか? 思い出は美しく、都合よく、心の中に残されている。 「あの頃は一花も若かったな。 もうその年じゃキャバ嬢はキツいだろ?」 「酷いこと言うのね。まだ売れっ子よ、ナンバー張ってるわ。」  裸の胸を押し付けて抱きついてくる一花は、とても煽情的だ。綺麗な顔をのけぞらせてセクシーだ。リキは久しぶりに女を抱いた。 「リキはやっぱりバイなのね。 すごいわ、これ。」  勃ちあがった逸物を掴んで扱かれた。細い一花の指で、もうイキそうだ。  一花が耳元で囁く。 「ねえ、女もいいでしょ。やっと抱いてくれた。 また、濡れて来ちゃった。」  激しく夢中になって、一花の中で果てた。 「ああ、素敵。リキ、すごいわ。」  何年もずっと待ってた、なんて可愛い事を言う一花に、気持ちがほだされた。  夕子のことを覚えている、という一花に思わず問い詰めた。 「知りたいの? 夕子の住所とか,家族とか。 北海道よ。函館。旦那も子供もいるわよ。  今さら会いに行きたいの?」 夕子はこっちにいる時、札付きだったと言う。 「みんなの財布からお金を抜いて、見つかって大変だったの。うちに泊まらせてあげた時も、指輪とかアクセサリーとかお金が無くなったわ。」  そう言えばリキの家でも、親の残した小型金庫から札が抜かれていた。表沙汰にはしなかったが確かにいくらか無くなって、支払いに慌てた事があった。 「恋は盲目、だな。 夕子のことは綺麗な思い出にしたかった。」 「全く、リキって世間知らずね。 ギター馬鹿。しっかりしたいい奥さんが必要ね。」  リキが奥さん、と言われて頭に浮かんだのは 恭司の顔だった。  一花と素っ裸の身体を絡ませあってくちづけをした。 「一花は綺麗だ。ありがとう。 でも、俺は好きな奴がいる。」  シャワーを使って帰り支度をした。 「帰っちゃうの?」  寂しそうな一花に心が揺れた。

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