10 / 37

第10話 朝帰り

 家に帰ったら、玄関に恭司がいた。 「朝帰りかよ。お楽しみか?」 「ああ、女の所から帰って来た。」 「おまえ、女もイケるのか?」  恭司は寂しそうな顔をした。 リキは何だか物凄く悪い事をしたような気持ちになった。 「これから仕事で北へ行く。 しばらく会えないから挨拶に来たんだ。」 「北?どこ?」 「北海道、函館だ。」  リキは一花から聞いた、夕子のいる町だ、と気付いた。 (偶然だな。恭司は夕子を知らないだろう。) 「神谷の叔父貴の仕事だ。今回はシドは連れて行かない。刺青も途中だし。必要になるまでこっちにいればいい。」  背中の彫り物は、1日数時間彫っても何ヶ月もかかる。もうかなり進んではいるが、途中で辞めるとみっともないから、最後まで入れさせたい。 「神谷のかしらの案件ってことは、殺しもあるんだな。」  始末屋の事がリキにはバレている。隠してもいずれわかってしまうから、諦めている。 「アニマルクラッシュっていう胸糞動画の製作所が函館にあるらしい。  そいつらを制裁してぶっ潰す。動物がいれば保護する。力丸は元気か?」  酷い動物虐待。それを見たいと金を払う気狂いがいる。  恭司はそいつらに同じ事をしてから始末する。 シドを連れて行ったら寂しいだろう。まだ新婚なのだ。 「シド抜きで、解決してくれよ。蜜が寂しがる。」 「おまえ慰めてやれよ。」  思わず恭司の胸ぐらを掴んだ。 「怒るなよ。そうか、おまえは恋人ができたんだな。女の。」 「恭司、俺に殴られたいんだな。」 「ははは、待ってくれよ。 何を怒ってるんだよ。」  裏切って女を抱いたのはリキの方だ。裏切るも何も、何の約束もしていない。 (なんで、こう、後ろめたいんだ。 俺が女を抱いたって恭司には何ともないだろう。) 「じゃあな。函館、期間はどれくらいになるか、 わかんねえけどな。  シドには心配すんなって言っておいてくれよ。」  直接言うと、ついて来たがるから、と言った。

ともだちにシェアしよう!