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第2話

「そうだ。可愛いだろう?お前にぴったりだ」 そうだろうかと思う。 確かに、飛鳥は幼い頃より「可愛い」と言われることがあった。 だが、そう言われることには抵抗があったのだ。 これから自分は、飛鳥として生きて行かなければならない。 もう、自分の意思では生きていけないのだろうかと、飛鳥は絶望すら感じた。 東堂に何をすれば良いのかと問うと、男の客に股を開いていれば良いと言われた。 飛鳥は別に男色なわけでもなく、男に体を売るなど考えてもいなかったのだ。 逃れられないこの状況に、飛鳥は絶望を深める。 それから飛鳥は、これから生活をしていく部屋に案内された。 八畳ほどの広さに、四人で寝ることになるという。 想像しただけで窮屈だ。 東堂が部屋を出ていき、飛鳥は部屋の隅で膝を抱えていた。 すると、部屋に男が入ってきた。 この部屋の住人だろうか、飛鳥のことを舐めるような視線で見てくる。 不躾なその視線に、飛鳥は嫌悪感を抱く。 すると、その男が口を開いた。 「今日入った新入りか?」 彼の年の頃は、飛鳥と同じくらいだろうか。 「そうだ……」 飛鳥は目一杯に毛を逆立てた猫のように警戒し、答える。 「お前、名前は?」 「しろ……飛鳥」 「ふーん。俺は宗士、十六歳だ」 宗士と名乗る少年に年齢を問われ、同じだと答える。 宗士はしゃがみ込み、飛鳥の顔を覗き込んだ。 「嫌だな」と思いながらも、飛鳥は無言で耐えた。 「お前、見てくれは上玉だな。売れそうだ」 「え?」 飛鳥には宗士の言葉の意味が分からなかった。 「顔がいいなって言ってるんだ。俺の好敵手になりそうだな」 宗士は不遜な物言いをする男だが、そこら辺ではお目にかかれないような美形である。 華やかさのある美男子であり、香煌楼では屈指の人気男娼だ。 確かに飛鳥としても、宗士は見たことのないような美貌の持ち主。 「ふぅん……俺は別に……」 飛鳥は無感情に答える。 そんなことを言われても、来たばかりだし良く分からないのだ。 「なぁ、ここがどういうところか知ってるか?」 「男の相手をするって言ってた……」 「そうだ。これからお前は、男たちに抱かれるんだ」 「うん……それは聞いた」 飛鳥が空虚な目を向けると、宗士はなおも尋ねてきた。 「そもそもさ、男と寝たことあるのか?」 飛鳥は答えたくなかったが、何となく答えてしまう。 「……ない」 すると宗士は、目を見開いた。 「女とは?」 その質問に、飛鳥は顔を赤くして口ごもった。 それは、否定を意味している。 「え?じゃあ、生娘ってことか?」 宗士の言葉に、飛鳥は耳まで赤くした。 「お前、耐えられるのか?第一できるのかよ」 そう言う宗士の顔は、何とも悪辣に見えた。 いや、本当に心配してくれているのかもしれないが。 彼の問いに、飛鳥はそっぽ向いて返事をしない。 「……まぁいい。この部屋じゃ俺が頭だからな、言うこと聞けよ。新入り」 そう言うと、宗士は部屋を出ていった。 見知らぬ男となんてできるわけがない。 でも、しないという選択肢は飛鳥にはないのだ。 その夜から、飛鳥は客への対応などの教えを受けた。 何もかも初めての飛鳥としては、困難なことばかりだ。 しかし、自分の運命を受け入れてこの場で生きていくしかない。 翌日、飛鳥は客を取るための指南を受けることになった。 客との接し方や、奉仕の方法まで学ぶのだ。 本当はこんなことはしたくないが、これが自分の定めならと飛鳥は半ば諦めている。 東堂から「行け」と言われた部屋に行くと、そこには一人の青年が座っていた。 後ろを向いているので、顔は分からない。 飛鳥は取り敢えず声をかけることにした。 「飛鳥と申します」 すると青年はこちらを振り向いた。 青年の顔を見て、飛鳥は衝撃に固まる。 その青年は、飛鳥が夢に見てきた男にそっくりだったのだ。 いや、きっと夢の男はこの青年に違いない。 心なしか、この青年も驚いたような顔を一瞬見せたような気がする。 しかし、互いに余計なことは言わない。

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