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第25話
飛鳥の答えに気を良くしたのか、和音は愛する男の頬に口づけをした。
「信じるよ」
「うん……僕も和音さんのことを、信じてる」
それを聞いた和音は、愛おしげに柔らかく微笑んだ。
それから飛鳥は、早くこの香煌楼を出たいと思うようになった。
けれど彼の年季はまだまだ残っているから、出ていくことができない。
年季が明けるまでは、ここにいる男娼たちはがんじがらめなのだ。
もし身請けしてくれる相手が現れれば話は別だが、そう上手くいくわけでもない。
また、飛鳥の愛する和音は彼よりも早くこの地を去ることになっている。
そうなれば、二人は離れ離れになってしまうだろう。
再会することができるかどうかなど、分からない。
そのことを考えると、飛鳥は怖くて仕方がなかった。
その後のある店休日に、いつもの場所に飛鳥と和音の姿があった。
二人は池を見ながら並んで座っている。
「あと半年で、俺の年季が明けるな……」
そうぼそりと呟く和音に、飛鳥は鼓動を跳ねらせる。
この話題がついに来たか、というのが彼の気持ちだ。
「そ、そうか。もう少しだね……」
飛鳥としては、そう言うだけで精一杯。
和音がこの場を去った後、二人はどうなるのかを考えるだけで、飛鳥の胸は苦しくなる。
飛鳥の年季はまだ先まで残っているし、ここを離れられないから。
「そうだよ……」
そう言って、和音は飛鳥の髪の毛を長い指で梳いた。
その行為の甘さと、未来を憂う気持ちが綯い交ぜになった飛鳥。
「僕は苦しい……」
素直な気持ちを告げると、和音は呆気にとられたような顔をして、飛鳥の頭部から手を離した。
「どうしたんだ?」
「だって……和音さんが先にここを去ったら、俺はどうすればいい?」
もはや飛鳥は、和音のいない日常など考えられない。
彼がいなくなったら、一体どうなるというのか。
「そのことは、俺も考えてたよ」
「和音さんも?」
「あぁ。ここを、お前と一緒に出たい」
和音の腕が、飛鳥の体を包んだ。
「え!?でも、一体どうやって?」
もし飛鳥が遊郭を去るとすれば、残りの金を支払わなければならない。
そんな金、払えるわけがないのだ。
「そうだな……それは、これから考えるよ。今すぐってわけじゃないからな」
「そ、そっか……。そうだよね。僕も早くここを出たいけれど……そんな方法なんてあるのかな」
「分からない。分からないが、探してみるしかない。お前との未来のために……」
そう言うと、和音はきつく飛鳥を抱きしめた。
まるで、彼の決意の固さを示すように。
だから飛鳥は、もしかしたらここを思ったよりも早く出られるんじゃないかと、思えたのである。
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