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第26話

そんなある日、久しぶりに政忠が飛鳥を求めて香煌楼にやってきた。 身請けしたいと言われて以来、彼は店に来ていなかった。 飛鳥は、きっと身請けを断ったから気不味さから来られなかったのだろうと思っていたのだが……。 「お久しぶりです。もう、来てくれないかと思っていました」 政忠が来ないので、飛鳥の売り上げが落ちたのは確かだった。 だから、売り上げ面で少し悩んでいたところ。 「すまない。あれから、商いが忙しくて……遠方にも行っていたので来られなかった」 「そうだったんですね。でも、来ていただけて嬉しいです」 飛鳥が微笑むと、政忠が彼の頬に触れる。 「それは、稼ぎになるから?」 確かにそれはそうだが、まさか「そうです」なんて言えるはずがない。 首を横に振る飛鳥に、政忠は少し笑ってこう言った。 「いいんだよ、嘘つかなくて。君にとって私はお客だって、ちゃんと分かっているから」 「政忠さん……」 飛鳥は、以前彼から想いを告げられたことを思い出す。 政忠からは身請けをしたいとまで言われたが、和音がいるので断っている。 「そういえば……飛鳥くんの年季は、いつまでなのかな」 「え?まだ一年ほど残っていますけど……」 戸惑いながら飛鳥が答えると、政忠は決心したように言った。 「早く、ここから出たいとは思わない?心に決めた人がいると、前に言っていただろう?」 「そ、それはそうですけど……。叶うわけがありませんよ」 飛鳥の言葉に、政忠はさらに真面目な顔で言った。 「もし早く出たいなら、僕が叶えようか?」 「え、え?何を言ってるんです?どういう意味ですか?」 「君の借金を肩代わりして、早く出られるようにしてあげたい」 飛鳥は、どうして彼にそこまでされなければいけないのだろうと思う。 「そんな……そこまでしてもらうわけには……」 躊躇すると、政忠は相変わらず真面目な顔で「言っただろう?私は君が好きだと」と言う。 だから、想いは叶わなくても好きな相手を幸せにしてあげたいと思ったらしい。 「私は、君が泣く姿は見たくない。幸せになって欲しいから、せめてこれくらいさせてくれ」と、政忠は懇願する。 「ありがとう、政忠さん。でも、すぐには受けられませんから、考えさせてくれませんか?」と飛鳥が言うと、政忠は「いいよ」と頷いてくれた。 どこまでも優しい人だと思う。 自分はこんなことを言ってもらえるほどの価値がある人間なのだろうか。 そうも思うが、飛鳥は政忠にとても感謝した。 「君が去るまでは、君に会いに来ても良いかい?」 「もちろんです……。あなたには本当に助けられていますから」 「ありがとう……」 そう言って、政忠は飛鳥を抱きしめる。 自分を幸せにしたいと言ってくれる男に、感謝の気持ちを込めて飛鳥も彼の背中に腕を回した。 政忠の腕の中は心地が良い。 それは、相手の自分への想いが籠っているからなのだろうか。 彼については不快な点はないし、良い客だとは思っている。 政忠の腕に抱かれて、飛鳥の長い夜は更けていく……。

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