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第7話 番外編1-1
「ごめん、今日飲み会で帰り遅くなると思う」
嶋根と和解してから早3か月。
彼は毎日のように定時で帰宅し、泊りも一切なくなった。
ビジホかネカフェに泊まってたって本当なんだと確信した。
呆れたようなホッとしたような気持ちで穏やかに過ごしていたとある朝、そんなことを言われた。
「そ、れは…、ネカフェかビジホではなく?」
念のため確認すると「おい、いじるな」と嶋根が笑った。
「今回のは本当のやつ。
あまり行きたくないんだけど、今回ばかりは断れなくってさ。
絶対に帰ってくるから心配しないで」
ぽんぽんと彼が俺の頭を撫でる。
かつての俺ならモヤモヤしつつも「いってらっしゃい」と言えただろう。
「絶対帰ってきてね」
念を押すように彼を見上げると、真顔で俺を見下ろすのと視線がかち合った。
「んん~~~~」と唸りながら嶋根が俺をぎゅうぎゅうと抱きしめる。
「やっぱ行きたくない!!
まっすぐ帰りたい!!」
そのままなかなか離してくれないので、俺は彼の胸を押して離れた。
「仕事遅れちゃうよ」
「うう…」と彼は呻き、のろのろと靴を履いて玄関を出た。
そんなに行きたくないなら行かなくていいのに…、と思うのは自分が内勤だからだろうか。
営業職って大変だなーと、どこか他人ごとに思いながらも自分も出社した。
帰宅して久々に一人でご飯を食べる。
どうせ当分帰ってこないだろうし、自分も飲みにでも行こうかと思ったけれど、嶋根から「二丁目はやだ。だめ。浮気だよ」と言われたので行く場所がない。
俺があの場所に入り浸り始めたのは、男同士の恋愛について相談する場所がなかったからだ。
皆、ゲイではない人間と付き合っている男の話を面白がって聞いてくれる。
ただそれだけ。
俺は貧弱だし嶋根一筋すぎてゲイに全くモテないから何も心配しなくていいのに。
もそもそとご飯を食べ、お風呂に入り、ぼーっと金曜〇ードショーを観る。
今日に限ってそんなに興味のない作品でちょっとテンションが下がる。
23時過ぎにそれも終わって手持ち無沙汰になった。
もう寝ちゃうか…
でも、もしも今日、嶋根が帰ってこなかったらと思うと眠れない。
ソファでグダグダしていると携帯が鳴った。
嶋根からだ。
慌てて電話を取ると、相手は女性だった。
「あー、えっと、颯也さん?」
なんで俺の名前を?と疑問に思いつつも「そうですが」と答える。
「突然すみません。
嶋根さん、かなり酔ってて心配なんで迎えにこれません?
タクシーなら嶋根さんに払わせればいいと思うので」
「へ?あ、い、行きます」
「よかった~。
場所、LINEで送っておきますね」
電話が切れてすぐに位置情報が送られてきた。
それにしても、嶋根はそんなにお酒が弱くないのに電話もかけれないほど酔っているのだろうか…
俺は少し悩んだ後に自分の車で向かうことにした。
タクシーで吐いちゃったら大変だし。
位置情報を送られてきた居酒屋近くに車を停めて向かうと、女性に肩を支えられている嶋根がいた。
「あ、こんばんは。
嶋根の同居人の三木です」
俺が声をかけると女性は「うわぁ!本物!」と呟き「こんばんは。初めまして」とにこやかに挨拶してくれた。
すごく綺麗な人。
嶋根と並んで立ったらお似合いだろうな…
「嶋根さん、颯也さん来ましたよー!!!」
すごく大きい声で女性が嶋根の耳元で叫ぶ。
ぐったりした様子の嶋根は「うるさ…」と言いながら顔を上げた。
目が合う。
「えっ!?そ、そーやだ!!」
女性のもとから離れて俺のほうへよたよた歩きだしたので慌てて駆け寄ると、全体重をかけて抱き着いてきた。
「こ、腰が折れる!!」
なんとか踏ん張って支えているのに当の本人は「そーやだ!そーや!!」と呑気にはしゃいでいる。
女性が後ろから彼を叩き「嶋根さん重いんだから体重かけるの止めなさい」と怒った。
少し重さが減って、なんとか助かった。
「じゃあ、私はこれで。
あ、颯也さん!
私は嶋根さんのただの同僚で、結婚もしてるので、決しておかしな勘違いは止めてくださいね」
「あ、え、えっと、はい」
俺がしどろもどろに返事をすると、彼女は頷いて颯爽とどこかに歩いて行った。
旦那さんが迎えに来ているのかもな、と思った。
重い嶋根を引きずり助手席に乗せる。
離れようとすると「やだ」と体に腕を回された。
「これじゃ運転できないでしょ?」と諭すも「離れたくない」と駄々をこねられる。
「家に着いたらくっついていいから、ね。
早く帰ろう?」
そう言うとしぶしぶ離れてくれた。
なんだかでっかい子供みたいでおかしい。
「なんで笑ってんの。
俺は会えなくて寂しかったのに」と嶋根が口を尖らせた。
自分で飲み会に行くって決めたくせに。
俺もちょっとむっとしたので運転席に座ってから「一緒にいた女の人」と話しかけた。
「ん?笹川?」
「笹川さんっていうんだ。
美人だったね」
てっきり「そんなことない」とか否定されると思ってたのに「うん、まあ、顔はいいね」と嶋根が言うので悪戯心に火が付いた。
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