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第8話 番外編1-2

「俺さ、宝くんが好きってだけで、別に男が好きなわけじゃないんだよ。 初恋は女の子だったし」 「ふーん」と興味がなさそうな返事が聞こえて、少し冷静になった。 今まで俺が誰を好きであろうと、嶋根がそんなこと気にするわけがない。 女の子と付き合ってたってわけでもないし。 なんだか自分が馬鹿馬鹿しくなって、言ってしまったことを後悔する。 無言のまま家につき「ついたよ」と嶋根に声をかける。 が、降りようとしない。 もしかして相当酔ってて歩けないのかな、と心配になり、運転席から降りて助手席のドアを開けた。 「笹川ってさ、すげぇ言葉強いし、性格きついし、正論パンチすごいよ?」 「へ、へぇ?」 「そんでさ、ゴリラみたいに屈強で強面の旦那がいる。 ありえないくらい仲良し」 「うん?素敵な夫婦だね?」 急に笹川さんの情報を語りだした嶋根に俺は首をひねる。 どういうことだろう? 「颯也には、俺みたいな男がいいんじゃないかな。 ちょっと性格に難はあるけど、うまくいくと思う」 「そ…、うかな? えっと、とりあえず家に入らない? お水も飲んだほうがいいと思うし」 遠くを見つめたままつらつらと喋る嶋根。 やっぱり酔いすぎてると思う。 早く水を飲ませて寝かせてあげなきゃいけない。 「他の人のこと、見ないでほしい。 どの口が言ってるんだって感じだよね、ごめん」 そう言って急に項垂れ始める彼に、もしかしてさっき俺が言ったこと、結構効いてるのでは、と思い至る。 俺の一時の悪戯心で傷つけてしまったと焦った。 「宝くん、意地悪してごめんね。 俺は宝くん以外の人に特別な感情を抱くことはないよ? ちょっと悪戯したくなっただけだよ」 そう言うとようやく彼がこちらを見た。 眉が下がり、ちょっと目が潤んでいる。 「ほんと?」 「うん。だから早く帰ろう? もう夜も遅いし、寝ようね」 「うん」と彼は満面の笑みになり、やっと車から降りてくれた。 結構酔いが醒めてそうだったけれど、嶋根は俺に体重をかけながら歩く。 「歩きにくいよー」と言ったものの「俺にやきもち焼かせようとした罰ー」と言われると反論できなかった。 玄関に入って施錠すると、今度は逆に持ち上げられてしまった。 「ちょっ!? 酔ってるんだから危ないよ!!」 と注意したけれど「俺そもそも酒強いし、酔い醒めてきたから大丈夫」と大股で寝室に連れていかれた。 今、俺の部屋にベッドはない。 嶋根の部屋にダブルサイズが1つある。 その広々としたベッドに嶋根が俺ごと倒れこんだ。 痛くはないけれど、覆いかぶさっている嶋根が重い。 「宝くん、重いよ。 これじゃ寝られないってば」 ぐいぐいと彼の体を押すも退いてくれない。 「颯也にお試し行為されて悲しかったなー。 慰めてくれないと眠れないなー」 なんかちょっとわざとらしい気もするけれど、後ろめたい気持ちがある手前、無視はしがたい。 っていうか、俺がやったことって世間的に言うお試し行為ってやつなのか。 ちょっとショック。 「よ、よしよし?」 俺に覆いかぶさる嶋根の後頭部をなでる。 撫でてくれるのはいつも彼のほうだったことを思い出して、自分はしてもらってばっかりだと気づいた。 「んふふ」と嶋根は喉を鳴らして笑う。 これで合ってた…、のかな? ホッとしたのも束の間、手首を掴まれて彼に見下ろされる。 「確かによしよしもいいけど、俺ら大人だよ? 大人の慰め方で慰めてほしいな」 そう言って彼は怪しく目を細めた。 本能的な恐怖に俺の背筋を凍らせた。

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