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第5話 夜会のガゼボ。
ラファエルに揶揄われた新人執事レイモンドは男爵家の次男、故に家督を継げぬため早い時期から自身の身の振り方を考えるようになった。
だからといって夜会や舞踏会に出席しないわけにもいかず、実家を出る直前までは顔を出していた。
堅物で真面目とはいえ、容姿はまあ整っているので、モテないわけでもなかった。
とある王城での夜会でのことだった。
しつこく付きまとう淑女達から逃げるように、カーテンの隙間に入り込み外を見たら、『無能王子』ことラファエルが庭園の中心にあるガゼボで複数の紳士達と戯れる姿を見てしまった。
見ようとして見たのではない、偶然見えてしまったのだ。
月明かりに照らされ乱れるラファエルは芸術品のようで見入ってしまい、我に返ったのは紳士達が城の警備隊に見付かり捕らえられるまで、ようするにレイモンドは一部始終を傍観してしまったのだ。
捕らえられた紳士達は城の中に入れられたが、着乱れた衣服を正すラファエルと目が合い、レイモンドは慌てて夜会へ戻った。
『無能王子が紳士達を誘ったのだろう』、と、その当時は解釈していた。
その理由はさして問題にもされず、紳士達は咎められることはなかったからだ。
そしてラファエルはレイモンドにも『今夜私の部屋に来い』と誘ってきたから。
しかしそう揶揄われてから、数日間観察していたレイモンドだが、他の執事にそんな揶揄かうラファエルの姿を見ることはなかった。
だからこそ、ラファエルが自分だけを選んで揶揄い、弄んでいることに気付いたのだ。
自分が堅物で真面目だから、主人の言葉と言えどそれに背くだろうレイモンドだからこそ、言っている。
そしてラファエルが自分に向ける視線は、他の執事やメイドに向ける視線とは、少しばかり違うことに気付いた。
まるで何かを欲しがる子供のような、そんな目をしているようだと、レイモンドは感じた。
「なぜ殿下は、俺を見るときだけそんな顔をするのか……」
けれどそれは、あの夜会のガゼボでみた潤み熱を帯びた瞳ではなかった。
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