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第6話 一冊の手帳。
ラファエルの専属執事アランは元々は隣国の王女に仕える執事の一人だった。
何故アランがラファエルに仕えているのか。
その理由は、アラン自身の意思だった。
離縁を言い渡されたラファエルが心配になったアランは王女に頼み込み、こちらの国にやってきたのだ。
その当時ラファエルには味方がなく、そして事情を知っていたからこそアランは一緒に戻った。
それでもアランもそこそこ高齢、執事を引退する年齢に近付いていた。
だからこそアランは王城で働くレイモンドを見かけた際、王に願い出てラファエルのいる離宮の執事にした。
『殿下のお気に召されたようなら、専属執事を交代しますが』
その言葉の裏には、『自分は引退を考えている』という意味も込められていた。
アランはあの夜会のガゼボでレイモンドがラファエルの姿を見ていたことに気付いていたのだ。
「私は明日、休みをいただくことにしました。明日はレイモンド、貴方が殿下に仕えなさい」
申し送りのときに、離宮の従者全員の前でそう伝えた。
流石にラファエルの専属執事に言われては頷くことしか出来ないレイモンドは、心の中で溜息を吐いてから返事をした。
「わかりました」
この離宮にはレイモンド以外にも執事がいるのに、何故揶揄われている自分を指名するのだろう、と、心でそう思っていた。
そのあとアランはレイモンドに一冊の手帳を手渡した。
その手帳にはラファエルの好む紅茶の淹れ方や温度、そしてよく訪ねてくる来訪者の身分と名前などが事細かに書かれてあった。
「アランさん、……俺が目を通していいものなのでしょうか」
レイモンドはその手帳を返そうとするが、アランは軽く微笑んで言った。
「手帳がなくても、殿下のことなら私の頭に入っています。この手帳の内容を覚えて、明日はレイモンド、貴方が殿下に仕えなさい」
『私の専属執事はアラン以外は考えていないよ』、と、ラファエルに言われたときに、この老執事は内心ではこう考えていた。
「いいえ殿下。そろそろ私以外の人を傍に置く時ですよ」
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