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第7話 早朝は五割増。

 その日の早朝、執事レイモンドは初めて主人の寝起きを見た。 「おはようございます、ラファエル殿下」  寝ぼけ眼のラファエルは低血圧で朝が弱い。  そのため、寝間着姿の彼は普段よりも五割増で、ただならぬ色気を漂わせていた。  手帳には『早朝の身支度に、他の者を入れるべからず』と記載されている理由を理解したレイモンドだった。  眠気覚ましにジンジャーティーを淹れると、それをゆっくりと飲み干す。 「……アランはどうした」  ラファエルは目を擦りながらレイモンドに訊ねた。 「アランは休暇でございます」  そう言うと、ぼそりと呟いた。 「逃げたわけではないのか」  アランは元々隣国の王女殿下の執事、自分に同情して着いてきたことにラファエルは気付いていたから、いつか目の前から消えるのだろうと思っていた。 「私が本日ラファエル殿下の執事を任されました。お嫌でしたら別の執事に交代いたします」 「いや、お前で良い」  ラファエルはその場で寝間着を脱いだ。  『殿下は衣服を乱されるのは好まれない。また着替えはご自分でされる』、手帳にはこう記されていた。  レイモンドは無造作に散らばる衣服を拾い籠に入れ部屋の外に出す。  着替えに関してはこれしか記載されていなかったので、あまりラファエルのほうを見ぬように控えていると、声を掛けてきた。 「着せろ」 「……かしこまりました」  手帳が全てではないのだろうか、と、そう思いながらもレイモンドはラファエルを着替えさせる。  やはりこうして見ても、四十歳とは思えないほど整った身体は、芸術品のような靭やかさがあった。  レイモンド自身にその気はないのに、その靭やかな腰のラインに触れてみたい気になってしまう。 「何か話せ」  さすがに無言のまま着替えさせられるのも居心地が悪いのだろう、気付いたレイモンドは当たり障りのない会話を試みる。 「……殿下、よくお眠りになりましたか」 「いや」 「……本日のご予定ですが、昼過ぎにバッセル伯爵がお見えになられます」 「分かった」 「……」  ラファエルの返しは簡単な言葉だけなので、話すことがなくなったレイモンドは無言にならざるを得ない。  そのわかりやすい態度に、ラファエルは満足そうに微笑んだ。 「相変わらず、お前は堅物で真面目だな、レイモンド」

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