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第12話 引退宣言。
次の日の早朝、専属執事のアランはレイモンドを連れてラファエルを起こしにきた。
「おはようございます、殿下」
アランは慣れた手付きで眠気覚ましのジンジャーティーを淹れる。
「久しぶりによくお眠りになられていたようですね」
アランがそう言うと、色気五割増のラファエルは眠そうに目を擦りながら微笑んだ。
「……寝る前によい香りの紅茶を飲んだからかもしれぬな」
「レイモンドから、殿下がカモミールティーを好まれていたことを聞きました。明日からジンジャーティーではなく、そちらを淹れるようにしましょうか」
「……」
するとラファエルは目に見えて機嫌が悪くなる。
昨日二人で過ごしたときのことを、逐一アランに報告したとみられるレイモンドに、苛立ちを感じていることにラファエル自身が気付き、感情を押し殺した。
「朝はジンジャーティーでよい」
そして、それに気付けないほど長年専属執事をしているアランでもなく、軽く微笑んだ。
「殿下、私は最近朝も夜も弱く、腕力も衰えた老執事、そろそろ専属執事の引退を考えております」
するとラファエルは目を伏せ視線を泳がせた。
「……お前も私を見限るのか、アラン」
その姿を見たレイモンドは改めて知った。
ラファエルの心には、置き去りにされた子供のような部分が残っているのだと。
「いいえ、私の主人はラファエル殿下以外おりません。専属の座を退くのであって、殿下のお傍を去るわけではございません。……この生涯尽きるまでお仕えいたしますが、何分私はいい年なのです」
まるで子供に言い聞かせるように話すアランを見て、この二人の関係を羨ましく思っていた。
「この数日でレイモンドを立派なラファエル殿下の専属執事として育てたく思っております」
そして、アランのその思いすらレイモンドも初耳で、『昨日のようなことが毎日あるのは、さすがに俺は無理だ!!』と、内心で狼狽えていた。
「……分かった。お前の好きにして良い、アラン」
ラファエルは色々と複雑な心境になっていた。
長年仕えていたアランが、とうとう自分を見限りたいのではないか、と、不安に思いながらも、新しい玩具レイモンドを自分の傍に置ける理由が出来た嬉しさ、その思いを同時に味わっているのだから。
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