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02お披露目会
それは夜になってのことだった、僕はアルジャンに抱きしめられて思いもしなかったことを言われた。
「シルバは美しくて可愛いな」
「…………そんなこと言うのアルジャンだけです」
「俺に敬語を使わなくていいんだぞ」
「でも僕は仮の王妃だし、恐れ多くて」
「そんなところも美しくて可愛い」
「そうでしょうか」
王であるアルジャンは夜には必ず王妃の部屋、つまり僕が今使っている部屋を訪れた。そして僕を抱きしめて眠るのがアルジャンの日課だった。最初は僕も慣れなかったが、孤児院では子どもたちがぎゅうぎゅうのベッドで寝ていたものだ。そう考えればそのうちに慣れた。
「愛しているぞ、シルバ」
「えっと愛ですか? 僕はよく分かりません」
「そのうち分かる愛しいシルバ、我が王妃」
「…………はい」
ただアルジャンが僕を口説いてくるのには慣れることができなかった。僕は男でβだったから、普通に女の子が好きだった。特定の好きな女の子はいなかったが、ぼんやり将来は女の人と結婚して子供を持つのだと思っていた。だからアルジャンからの愛の告白を受け入れることはできなかった。
「そういえば三日後にシルバのお披露目をするぞ」
「ええ!? 男でβなのに王妃にするって言っちゃうんですか!?」
「この国では王である俺の言葉は絶対だ」
「…………貴族たちから反対されると思います」
「いやかえって妾に自分の娘を売り込む貴族が多いはずだ、もっとも俺が愛するのはシルバだけだがな」
「はぁ、貴族の方の反感をかわないなら良いことです」
こうして僕は三日後に盛大なパーティでお披露目されることになった。そして僕は知らなかったのだが、もう国中に王妃が決まったという噂が流れていた。三日の間僕は家庭教師と共に王族らしい所作の練習に励んだ。皇太后様もその様子を見に来てこう言った。
「男でβでなければ美しい花嫁ね」
「こ、光栄です」
「アルジャンの気紛れだと思うから、あの子が貴方に飽きるまでつきあってあげてちょうだい」
「かしこまりました、皇太后様」
皇太后様は初めは僕が王妃になることに大反対していたのだが、僕が十歳の子どもだと分かると五年の猶予があると考えたようだ。僕に対しての態度が随分と柔らかいものになっていた。息子の気紛れだと思うことにしたらしい。そうして三日後、盛大な王宮パーティが開かれた。その場でアルジャンはまずこう言った。
「この者はシルバ、未来の俺の王妃だ。異論がある者は今ここにすすみでよ!!」
王であるアルジャンにそう言われて貴族たちは男の僕を見て驚いていたが、誰もアルジャンに意見する勇気ある者はいなかった。そうしてアルジャンと一緒に王と王妃の椅子に座っていると次々と貴族たちが挨拶にきた。中でもグレル侯爵家の当主である男性は特に低姿勢でこう言った。
「偉大なる王と王妃よ。我が娘リッシュの愚行を許し、我が家に帰ることをお許しください」
「ああ、あの尊大な女か。却下だ、あいつは王妃を叩いたんだぞ。本来なら死罪でもいいところだ」
「そうですか我が娘がそれほど愚かとは知りませんでした。それでしたら、もう何も申し上げますまい」
「うむ、グレル家の忠誠はあの愚かな女が今後どれだけ役に立つかではかるとしよう」
「おおせのままに」
「では下がれ」
僕としてはリッシュのことが怖かったので是非グレル家に引き取って貰いたかった。でも下手にリッシュは要らないなんてアルジャンに言ったら、じゃあ処刑しようとか言い出しそうだった。他の貴族はアルジャンの言うとおり自分の娘を妾にどうかと曖昧にすすめてきた。アルジャンは考えるふりはしたが、一人も妾として城に呼ばなかった。これが王と貴族の政治なのかと僕は彼らのやりとりを見ていた。そうして一通り挨拶がすむとアルジャンとダンスを踊ることになった。
「男同士が踊るって変じゃないですか?」
「シルバは俺の王妃だ、他に誰と踊れと言うのだ」
「足を踏んでしまったらすみません」
「気にするな、シルバ程度の軽い体じゃ怪我もしない」
そうして僕らは踊った、アルジャンのリードが上手くて体格差があるのに僕は優雅に踊れた。密かに心配していたが一度もアルジャンの足を踏まずに済んだ。
「今までは母上としか踊ったことがなかった、シルバと踊るのは楽しいな」
「アルジャンはリードが上手いです」
「可愛いことを言う、そんな王妃にはキスをしよう」
「え?」
そう言った次の瞬間には僕の唇の横にアルジャンがキスをしていた、遠くから見ている貴族たちには口づけをしたように見えただろう。すると近くでガシャンとガラスが割れる音がした。
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