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05相応しくない

「キ、キスより酷いことをするんですか!?」 「シルバが俺にいつまでも敬語だと寂しいからな」 「えっと、止める。アルジャンと二人の時は止めるよう努力する」 「可愛い奴め、そうしろ。俺には本音で話をしろ」 「じゃあ、キスするのも止めて欲しいな」  僕がそう言ったらアルジャンはピタリと動きを止めた、そして僕に向かって肩をつかんで真剣に言ってきた。 「いや、キスはありだろ!!」 「僕はまだ子供だし、悪いことしてるようで抵抗がある」 「いいんだよ、子どもは多少悪いことをしたって」 「アルジャンがしたいだけでしょ?」 「バレたか、そうだ俺がしたいだけだ」 「んん、んくっ」  そう言ったアルジャンに僕はキスをされた、唇と唇を合わせるアルジャンにしては大人しいキスだった。だがそんなキスをアルジャンは僕の顔中にした、そして隙があれば舌を口の中に入れようとしてきた。 「駄目だってば!!」 「なんだ、物足りん。シルバとのキスは気持ち良いのに」 「…………」 「シルバ、お、俺とのキスは気持ち良くないのか!?」 「…………分かんない」 「ははっ、分からんか。それじゃ、いっぱいキスしなくちゃな」  アルジャンからの唇を合わせるだけのキスは慣れたからか気持ち悪くなかった。でも気持ち良いかと言われると返答に困ってしまうのだ。気持ち良いと答えた瞬間、もっと凄いことをされそうでアルジャンが怖かった。だから僕は分からないと答えたのだった。そうしてこんな日常を過ごしている間にもう一年が経とうとしていた。僕は貴族との付き合いはしなくていいが、新年を祝う王宮主催のパーティーには出席しなければならなかった。 「いいか、絶対に王の俺の傍を離れるな。貴族どもに頭からボリボリ食べられてしまうからな」 「アルジャン、おおげさだよ」 「おおげさなものか、俺だって隙あれば胸を押し付けられたり、キスされそうになったりと女からの誘惑が煩いんだ。シルバがそんな女に食われたら俺はその女を殺すぞ」 「分かった、アルジャンの傍にいるよ」  そうして新年を祝う王宮主催のパーティは始まった。僕は仮だが王妃として相応しい衣装でアルジャンの傍に控えていた。正直、侍女たちにスカートを着せられなくて良かったと思っていた。僕がまだ子どもだからか侍女たちはこっちのドレスもいいですわと冗談交じりにすすめてくることがあった。ちゃんと男の礼服をきた僕は王妃の席に座って貴族たちからの新年の祝いの挨拶を聞いていた。そしてまた最初のダンスをアルジャンと踊った、男なのに女性パートばかり上手くなってしまうのはどうかと僕は思った。 「もう俺の足を踏む心配もなくなったな」 「家庭教師がしっかり教えてくれてるもん」 「くっ、俺の王妃が可愛くてたまらん」 「だからってキスしないでよ」 「分かった唇の端で我慢しておこう」 「うわわっ!?」  アルジャンとダンスを踊った後、僕はトイレに行きたくなって席を外した。アルジャンは外国からきた客をもてなしていた。無事にトイレをすませると僕は王妃の席に戻ろうとした。でも廊下の角を曲がろうとした時、こんな噂話が聞こえた。 「見た!? アルジャン様、今日もカッコ良かったわ」 「それに比べてあの王妃はどう、なんて小汚い子どもなの」 「わたくしこそアルジャン様にふさわしいのに」 「あらっ、私だってそうよ」 「男妾なんて相手にならないわ、ふふふふ」  僕は急いで廊下に置いてある観葉植物の陰に隠れた、そうして貴族令嬢である彼女たちをやり過ごした。そうか今日も立派な衣装を着てきたと思ったけど、僕は貴族の間であんなふうに思われてるのかと悲しくなった。アルジャンがあんな女性と結婚するのかと思うとなんだか胸がすっきりしなかった。アルジャンにあんな女性たちは相応しくなかった。 「じゃあ、どんな女性がアルジャンに相応しいんだろう?」 「それは元婚約者の私に決まっているでしょう」  僕の自問自答に女性からの答えがあった。見れば新年は侍女の仕事を休みたいと言っていたリッシュだった。僕はこの一年でリッシュの性格を知っている、隙あらば彼女は僕の悪い噂を流そうとしたり、アルジャンの浴室に忍び込もうとした。どちらも侍女頭からこっぴどく叱ってもらったがリッシュはこりていないようだ。僕はリッシュもアルジャンには相応しくないなと思った、だから何も言わずに王妃の席に戻ろうとした。 「いいかげん、仮の王妃などやめなさい。男妾!!」 「僕と言い争ってるのをアルジャンが見たら処刑か国外追放だよ」 「う、うるさいわ。侯爵令嬢である私にそんなことできるものですか」 「そう思うならどうぞご勝手に、僕は王妃の席に戻るよ」 「あんたって、あんたって、本当に大嫌い!!」 「そこだけは意見が一致するね」  そうして僕は王妃の席に帰ろうとしたのだが、階段の上で誰かに背中を押された。僕はバランスを崩して階段を踏み外し、ふわりと宙に投げ出された。 「うわっ!?」

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