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やっていける自信ないです
リズトは寮の部屋の前に立っていた。
『302』
鍵を差し込み、恐る恐る扉を開ける。
「……失礼します」
返事はない。
誰もいないと思って中へ入った、そのとき。
奥から物音がした。
「ん?」
背の高い男が出てきた。
リズトは固まった。
整った顔。
モデルのような体型。
一瞬、素直に思ってしまった。
――顔、めちゃくちゃいい。
男はリズトを見ると、少し目を細めた。
「誰?」
「き、今日からこの部屋に……」
「ああ」
男は納得したように頷いた。
「例の経営者の息子?」
リズトの表情が固まる。
「……その言い方、嫌いです」
「ふーん」
男はリズトの前まで歩いてくる。
近くで見るとさらに背が高い。
リズトが一歩後ろへ下がると、男は面白そうに笑った。
「怖い?」
「怖くないです」
「じゃあなんで目潤んでんの?」
「潤んでない!」
クスクス笑われる。
「俺、ひかる。十八歳」
「……リズトです」
「知ってる」
「なんで……」
ひかるはベッドへ戻りながら言った。
「学校中で噂になってるから」
リズトの胸が嫌な音を立てた。
経営者の息子。
明日から自分は、そういう目で見られる。
「……帰りたい」
小さく呟いた。
ひかるが振り返る。
「どこに?」
「……」
リズトは答えられなかった。
帰る場所なんて、もうない。
俯いた瞬間、涙が一粒だけ床に落ちた。
ひかるはしばらく黙っていた。
そして――
「本当に泣き虫なんだ」
「……っ」
リズトが顔を上げる。
ひかるは笑っていた。
「これから楽しそう」
「……この人、大っ嫌い!」
入学初日。
最悪な同室相手との出会い。
このときのリズトはまだ知らなかった。
ここで出会う少年たちが、自分の人生を大きく変えることも。
そして――
自分がいつか、誰よりも眩しいステージの真ん中に立つことも。
お母さん僕には
ここでやっていける自信ありません
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