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第4話

 明紅は朱亮と共に、裴王朝の後宮の奥深くにある天狐像のある廟へとやってきていた。  廟の寂れ具合に思わず顔が引きつる。神聖なこの場所を、これほどにできることがあまりにも不敬に値する。この王朝は必ず悪い終わり方をすると確信できるほどだった。  せめて廟を然るべきやり方で閉じるべきだった。 「これはひどいですね」と、朱亮が言う。 「神をなんだと思っているんだか……」  明紅は呆れながら指をパチンと弾いて音を立てた。その音とともにたちまち廟は綺麗な新築へと形を変える。代わりに廟の周りの木々が少し減っていたが、これは気付かれることはあるまい。神木がある気配がしないので、使っても問題はないだろう。  そして、明紅は神像の前に立ち跪く。手を合わせ、目を閉じた。 「天狐さま、天狐さま。私の名前は明紅陽です。あなた様のひ孫です。どうか私に力をお貸しください」  そう言って目を開けると神像はキラキラと輝き始めた。その輝きは明紅を包み込む。温かな温度が全身をまとい、明紅の中にも強いエネルギーが湧き出す。 「失礼します」  そう言って神像の視覚の中に潜り込み、過去を遡る。  つい数日前に来た青年の姿を見つけ、その青年が次にいつ来るか未来を見た。  12回目の夜が来たとき、青年はやってきた。  それだけを確認すると、明紅は目を開けた。そして、手を拱手しながら深く頭を下げる。 「ありがとうございました。天狐さま」  神像の視覚を共有するのは少しばかり力を消耗する。  明紅は壁のある方に行って腰を下ろした。すると、朱亮が懐から竹でできた水筒を渡してきた。 「ああ、ありがとう」  そう言って水筒の水を飲み、朱亮に返す。 「視覚の共有は苦手だ」  かなりの力を消耗するだけではない。自分の見え方とは違う見え方をするので酔ってしまうのだ。馬に乗って酔ってしまう人間、空を飛んで酔ってしまう天狗──。それらとよく似ているかもしれない。 「私にやらせればよかったのに」 「朱亮も苦手じゃないか」 「へへ」と笑った朱亮は不思議と嬉しそうな顔をしていた。  朱亮も視覚の共有は苦手だ。苦手の度合いで言えば、朱亮のほうが苦手なのだろうと思う。酔い方にも人それぞれあるように、妖もそれぞれだ。  しばらく休憩をして立ち上がり「戻ろう」と言って元の世界へと戻った。  執務室に戻ると、明紅と朱亮は同じ部屋にあるそれぞれの机に座っていた。 「祈祷から12日後ということですから、7日後ですか」 「そうだな」 「7日後まで元の仕事をしていますか?」 「ああ。とりあえず、華桜国の井戸の幽霊の仕事を片付けよう。変な問題が絡んでいなければ、5日もしないうちに終わるはずだから」 「はい」  明紅は机の上にある華桜国の仕事の書類を取って広げた。

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