6 / 18
第6話
☆☆☆
井戸に幽霊が出るから退治してくれという祈祷があった。
それで調べて行ってみたら、その地域に天狐さまの神像がないのだよ。それなのに、その地域から祈祷があった。おかしいだろう?
だから人の姿に化けて部下と二人で「天狐さまの神像を見たことはないか」って調べて回った。でも、誰も「知らない」と言う。
そもそも「天狐さま」という妖狐の神の存在など誰も知らなかった。
どういうことか分からず、一度天界に行くことにした。天界にはその地域を守護している神がいるからな。
そうして行ってみれば、「天狐を祀る人はいるが、人ではない」と言われた。どういうことか分かるか?
☆☆☆
明紅の問いかけに、青年は斜め上を見つめてから「そうですね」と言って答えた。
「人ではないということは、妖怪か幽霊ということですか?」
「違うんだよ。動物だったんだ」
「動物?」
話に乗ってきてくれた青年に、明紅は手を叩いてその場から青年の目の前に瞬き一つで移動する。
「そう! なぜ動物だとわかったと思う?」
こぶし一つ分しか顔と顔は離れていない状態に、青年は目を見開き、顔を赤らめた。
その様子に「おっと失礼」と言って距離を置く。
「その神様が教えてくれたというわけではなさそうですね。そうですね……妖や幽霊の類であればあなた達がすぐ分かりそうですし……なにより幽霊が幽霊をうるさいというのであれば、自ら解決しに行こうとするはず。自分で解決できない存在、即ち動物が頼んだということでしょうか」
「正解」
にんまりと笑った明紅は、思い出してため息をついて「ここで2日を消耗したんだ」と言った。
「この祈祷は早くて3日、遅くても5日で解決するはずだった。いや、予定だった。でも、祈祷した人を見つけるまでに2日。その時点でもうここに来れなくなる可能性が出てきたわけだ」
☆☆☆
普段ならあまり祈祷するものを探すことはしない。
だが、今回は「どこの井戸から」という情報を聞くことができなかった。だからまず「どこの井戸から」という情報を聞き取らないといけない。
情報が足りないとこうやって現地に赴いて祈祷したものを探し出さないといけない。神は万能じゃないからね。
いや、天界にいるような神の中でもある特定の箇所を守護している地域に根付く神なら、詳しく分かるんだけれど、なにせ我々は特定の場所を持っていないから。
それで、まずは井戸を探すことになった。
とにかく探してそれっぽい場所を見つけたんだ。そうして見つけた幽霊の声がうるさい井戸を見つけた。井戸の下に入ってみたらびっくりだよ。水があると思うだろう? 水がなくなったんだ。
水がない、ただの空気のある空間でね。
ひたすら進んでいったら、ぐるぐると同じところを回っているから、とにかく適当に壁を殴って壊したら迷路に入ってしまったってわけ。
☆☆☆
話を最後までし終える。
青年は途中で立って話を聞くことに疲れていたらしく、その場に座っていた。
「迷路で迷っている幽霊が助けてって騒いでいるのでは?」
青年の言葉に、明紅はぽかんとしてしまった。
「え、俺なにか変なこと言いました?」
「君、私の部下になるつもりはないか」
想定していなかった答えに、明紅はそんなことを口走っていたのだ。
「俺の祈祷をどうにかしてください」
「そうだね、そうだった。では、君の話を聞こうか」
「はい」
頷いた青年を見たところで、明紅は「ところで」と言った。
「私でいいのか?」とにんまりと笑うと、青年は先ほどのひと悶着を思い出したらしい。
自分が嫌がっていた相手に頼んでいることに恥ずかしさを感じ、顔を赤くしていた。
「か、構いません!!」
「ふふふ」と明紅は笑い、そして「いいだろう」と言った。
ともだちにシェアしよう!

