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第21話
帰ってきたばかりの明紅には仕事がなく、執務室で朱亮と茶を飲みながら話をしていた。
明紅が留守にしていた間の出来事を聞いていた。
「月沈国はどうなったんだ?」
「月沈国は胡明一族が王朝を倒しました。そして皇帝に即位しました」
「それは知っているんだが、なぜだ? 皇太子はどうした?」
「どこでその情報を?」と聞かれ、明紅は「あー、少し知っていた」とだけ言葉を濁した。
朱亮はそれ以上聞いてくることはなかった。
「皇太子は分かりません。とにかく、即位して数日後に胡明一族が挙兵し、戦いが始まったのですが、裴王朝……あの皇太子はなぜかすぐ白旗を挙げたのです。胡明一族は皇太子を含めて裴一族を宮廷の奥深くに幽閉したと宣言しました」
「じゃあ、今は皇太子の行方は分かっていないのか」
心配だ。
しかし、皇太子はか弱そうに見えて強かな男だ。そのうえ、神通力も通じないのでなにを考えているのかもわからない稀有な存在でもあった。そう簡単にあの男が幽閉されるとも思えない。
「胡明一族について聞きますか?」
「今初代か?」
「はい。胡明宇……彼が初代皇帝となっています。彼の統治後、国は落ち着いていると見てもいいでしょう」
明紅が山にこもって少しして胡明一族が皇族となったとするならば、今はもう安定しているのだろう。
今度偵察にでも行こうか、と思っているところで目の前に新たな気配を察知した。ふと前を見つめていれば、何もなかった空間から明然が姿を現す。
「兄さん、来たよ」
にっこりと笑った明然と、その姿を見た朱亮は目を見開いて驚いていた。
「誰だ?」と朱亮が警戒しながら立ち上がる。
「明然だ。僕の弟子だよ」
「弟子? 弟子なんて聞いていません。そもそもあなたは山にこもって修行していたのでは?」
「ああ、そのときにできた弟子だよ」
困惑した顔をした朱亮に、明然は拱手をした。
「胡明然と申します。胡明宇の子です」
「!?」
朱亮は声にならないような音を発し、さらに驚く。そして、明紅を見た。
「どういうことです? 人間なのになぜこの場に来ることができたのですか? そもそも胡明一族の子供ってことは皇族でしょう? 弟子ってなんですか?」
言いたいことがたくさんあるらしく、朱亮は立て続けに明紅に質問を投げた。
「とりあえず座ろうか。明然、こっちおいで」
明紅は明然に手招きをして、席を譲って座らせた。
明紅は机の端に腰を預け、明然を見る。話してもいいか、と言葉に出さずとも問いかけると、明然は頷く。
「おそらくだが、明然は半妖だ。私が見る限り限りなく妖の血が強く入っている。そして、神通力の強いものの血も入っている。言いたいことは分かるか?」
「胡明……まさか」
「そのまさかだね」
どれだけ血が近いかは、胡明一族の家系図を辿ってみなければ分からない。
おそらく、清陽の孫の代までの誰かが、胡明一族の血筋に入っているだろう。
清陽に関しては春蕾一筋なので清陽が胡明一族に関与しているとは到底思えない。
清陽と春蕾の子供までは明紅にもわかるが、その孫の代までになると、正直何人いるかなど家系図を見ないと分からない。
「兄さん、また面倒なものと関わっている」
「またって?」ととぼけると、朱亮はため息をついた。
「明櫻は実の弟だとしても、あなたにとても粘着質だし……執着もしている。今度は血筋が怪しい子供を拾ってきたのですか? あなたは厄介なものを近くに置きすぎています」
「子供じゃない」
そういったのは明然だった。
「僕はもう22歳だし、立派な大人だ。そりゃあ……出会ったときはまだ子供だったけど」
明然はちらちらと明紅を見た。
明紅はそんな明然の頭を撫でてやる。
それは子ども扱いも同然だったが、明然は嬉しそうに頬を緩めた。
「兄さん、僕ここに来たよ。一緒に過ごしてくれるでしょう? それとも仕事するの?」
「いいや。君の家に招待されないといけない。連れてってくれるかな」
「はい!」
元気に立ち上がった明然を見て、明紅は朱亮に「またあとで」と言った。
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