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第23話

 明然の自宅はそれなりに広い。  さすが皇族の家系というだけある。  しかし、皇族なのにこんな宮廷の外で警備もいないようなところで暮らしていいのだろうか。  部屋の中を見ていると、高価そうなものもないことに気が付き、明然を見た。明然は「ん?」と首を傾げる。 「皇族なのに、こんな生活で大丈夫なのか? 危険はないの?」 「僕はある意味皇族ではない。表向き皇族にはなっているけれど、彼らの仲間には入れないよ」 「ああ……」  明然との付き合いはそれなりにある。だからこそ、言わんとしていることを理解した。  彼の父親が今では皇帝という存在で、母親は元使用人だと聞いている。  しかも、母親は出産後に行方知らずになり、明然は他の嫡子からひどい扱いをされていた。 「でも、父親とはそこまで仲が悪くなかったと聞いていたと思うんだけれど」 「でも、これだからね」  明然は手を広げた。 「そのうえ、仕事もよく分からないものだし」 「それは私も手伝うと言ったじゃないか」 「そうだね」 「仕事はもう始まっているの?」 「うん。でも、ただの雑用だよ。今のところ」 「なんかあったらいつでもおいで」  そういえば、明然は嬉しそうに笑った。  明然の家から自宅へと戻ると、明紅は執務室で頭を悩ませていた。 「どうしたのですか?」と、朱亮が聞いてきて明紅は「うーん」と呟いた。 「明然……さっきの子の……彼の家系を調査するかしないか迷っている」 「した方がいいですよ」 「でも、仕事じゃないわけだし、個人的に調べたら明然はどう思う?」 「わざわざ言うことではないでしょう。知ったことも知らないふりをすればいいはずです。兄さん、そういうのはうまいはずでは?」 「……そうだな……」  明紅は席から立ち上がり「天界に行ってくる」と告げた。  天界にやってくると、歴史保管課へ向かう。  受付に「月沈国について調べたい」と告げると、保管庫へ案内された。  以前は裴一族について調べていたが、今回は胡明一族だ。しかし、その前にやることがあった。  それは、裴弦についてだ。もし、この保管庫に裴弦の書物があれば死んでいることになり、存在しなければ生きていることになる。それだけを知りたかった。  裴一族の本棚に入り、裴弦の名を探す。最後まで探し切ってもないので、明紅はホッとした。 「まだ生きているんだな」と呟く。  すると「おやおや」と後ろから声が聞こえて振り返った。  向こう側の本棚の隙間から汪天がのぞき込んでいたのだ。 「よく月沈国について調べているんですね」    嫌味のように明紅は言う。 「ああ、私の趣味は月沈国について調べることなので。この国はとても面白いですよ」 「非番?」と聞くと、汪天は「はい」と頷いた。 「暇ならちょっと手伝ってもらえませんか?」  まさかの汪天からの申し出に、明紅は目を見開いた。 「なぜ?」 「いいからいいから」  手招きをする汪天に、仕方なしにそっちの本棚へと向かった。

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