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第24話

 汪天のいた場所は沈王朝の一族について書かれている本が並ぶ本棚だった。 「なにを手伝えと?」 「沈王朝ですごく長生きしていたらしい人物がいるんですよ」 「はあ……」 「その人はどうにもこっちの資料では210歳まで生きたようで……普通あり得ないでしょう? だから、それを調べているんです。人間界でもそのまま210年生きたのか。それとも別人として成り代わっていたのか」  明紅は腕を組みながら汪天を見た。大真面目にその本を探しているようで、本棚の本を一冊ずつ引き抜いている。 「そもそも、そちらの資料が間違えているのではないですか? 天界のここにある本が間違えるなんてありえません。それに、人間が210歳生きると本気でお思いですか?」 「うちが間違えているって言いたいのですか」 「ええ。そうです。もし間違えてなくても、その人物は人間ではないのでは?」 「妖怪っていうこと?」 「はい」  妖怪という新たな仮説に、汪天は腕を組んで黙り込んだ。 「しかし……なぜうちの記録対象になっているのでしょうか」 「あくまで仮説ですが……人間の血の強い存在であれば、そうなることもあるでしょう。逆に妖の血が濃ければ、妖として扱われるはず。長寿であるところのみ、妖の血を継いだのではないでしょうか」  例えば……明然のように、だろう。  そうだ、明然についても気になることが多い。 「そんな人物など聞いたことがない」 「汪天殿が知らないだけでは?」  そういえば、汪天は口元に笑みを浮かべた。もちろん、目は笑っていない。むしろ威嚇するような眼差しである。  この男とは仲が悪いが、本気の喧嘩をしたことはない。喧嘩するほどの気力をお互いに持っていないのである。 「でも、実際そうでしょう」と明然はうっすらとした笑みを浮かべてさらに挑発した。 「そうですね」と汪天も笑みを浮かべる。 「では、私はこのあたりで」  そう言って立ち去ろうとすると「あなたは知っているのですか? そのような人物を」と聞かれる。 「はい、知っています。もちろん、珍しいですけれど」  振り返ってから丁寧に答え、手を合わせて頭を下げた。 「では」と言って明紅は胡明一族の棚のほうへと向かい、自分の調べものへと戻ることにした。

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