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第27話
明紅が戻ってきてしばらくしたころ、清陽から仕事だと呼び出しを受けていた。
「新しい仕事がきたので、それを紅陽に頼みたい」
「分かりました」
「月沈国の後宮からの祈祷だ」
明紅は「また?」と言った。
以前はあの皇太子からだったが、今回はなんだろうか。
それに、そもそも天狐様の神像はまだあったらしい。
「夜な夜な妃の住まう棟の周りを幽霊らしき存在が徘徊しているので、どうにかしてほしいと」
「それ、僕たちがやることなの?」
「仕方ない。やってくれないか」
「……まあ、いいけど」
言いたいことはあったが、明紅はその依頼を引き受けることにした。
執務室に戻り、明紅は書類を眺める。
「雑用じゃないか? こんなの、僕じゃなくたっていいのに」
朱亮が書類を覗き込むので、明紅は彼に見ていた書類を渡した。
「後宮だからじゃないですか?」
「というと?」
「ほら、後宮に男の姿で出入りすることはできないでしょう?」
その言葉に初めて明紅にこの仕事が回された意味を知る。
明紅以外に清陽の部下は数人程度いるが、清陽と明紅以外に神通力を使えるものはいない。
化けることは容易くても、自分の似通った姿になる。
完璧に別人になることができるのは、妖としての力を持つものに限られてしまう。
「こんなことにも気付かないなんて、ちょっと怠けすぎたな」
十数年にも及ぶ山籠もり生活は悪くはなかった。
しかし、それなりに影響も出てしまっているのかもしれない。
「ふふ、兄さん、僕が気付くから大丈夫です。兄さんは一人じゃないんですから」
そう言われて、明紅は小さく微笑んだ。
朱亮がいなければ、一人で仕事を全て完璧にこなすことは不可能だっただろう。
最高の相棒であり、最高の部下である。
「さて……後宮にどうやって入りますか?」
朱亮の質問に、明紅はひとつ考えがあった。
「明然に頼んでみようかと思う」
「兄さんがそう言うならいいけれど……」
なぜか不服そうな顔をしているので、明紅はくすりと笑った。
「どうしたんだ? 明然は嫌い?」
「嫌いじゃないけれど……兄さんが好きと言うのなら、いい人なんだと思う。でも……」
口を尖らせて黙り込んだ姿に、明紅は笑った。
「気に食わないのか?」という質問に、朱亮は視線をそらした。図星らしい。
「いつか気に入る」
そう言った明紅は、朱亮に優しい笑みを向けていた。
「きっと後宮で二人連れ添っているのは不審だろうから、ここで待っていてほしい」
「はい、兄さん」
明紅は事件について書いてある書物を見て、念言術で明然に接触を図った。
『明然、返事はいらない。仕事について話があるから、家に行く』
そう伝えると、念言術を切った。
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