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第27話

『何をしているのです』 その日の晩、ティルの夢枕に立ったのは主神だった。 「何の話だよ」 『リュートのことです』 「……その名前は聞きたくない」 子供のように膨れて、ついっと顔を背ける。だが主神はティルの正面にふわりと回り込んで、言った、 『あの子の中には原初の悪が打ち込んだ楔が残っていることはわかっているでしょう』 それも知っている。学園祭で盤面をひっくり返したが、根本的な解決には至っていない。そのために原初の悪は倒さないといけないというのは、彼と合意していたことだ……もう、過去の話だが。 『今、あの子は心の中で戦っています。貴方の愛を失ったために、光も差し込まない暗闇の中で、自分の心を守るべく』 「……そんなの、今後出会う女が救ってくれんだろ」 投げやりにそう言う。言いながらも心がずきずきと痛い。今日はまだ、仕方がない。時間がきっと解決してくれるはずだ。 『……君とあの子は、双子の星なのですよ』 「は?何言いだしたんだよ」 主神はそう言って、手の平を上に向ける。その手の中には、広大な宇宙空間の一部が映っていて、中央に、蒼星と、橙星が光っていた――瞳の色と、同じだった。 『どのようにして出会うのかは、最早私にもわからないことでしたが、君たちは出会い、惹かれ合い、愛で互いを救った――出会うのが運命だとは言いません。ですが、君たちを守護する星は、双子の引力をもっている』 「だから何だって言うんだよ」 『引き合う力を引きはがせば、因果律が狂い、何が起こるかわかりません。早急にリュートと仲を戻すべきです』 「知らねーよ。んなこと。勝手に狂わせておけ」 『それであの子が死んでも?』 主神の一言で、ティルの身体が固まる。彼が、死ぬ?またあの喪失感を繰り返すのか。 『今は君の言葉が因果を原初の悪の討伐という線に乗せましたが、君の愛が欠けたことでその線を踏み外そうとしている。踏み外した先の線が何に繋がるのかは、わかりません』 ティルは、ぐっと手の平を握り込んだ。 だって離れていったのはリュートの方だ。さよならと言ったのも彼だし、俺は至って常識的な懸念を伝えたつもりだ。そんなもの、彼の言うとおりに二人で頭を突き合わせて考えたって、何も出ない。家を継ぐということは、それだけ自分たちのような身分にとって重要なことなのだ。 俺は間違っていない。 「……謝るならあいつの方だろ。何がさよならだ。勝手に離れていきやがって」 『……君も頑なですね。一旦話し合うという選択肢はないのですか』 「そうしようとしたらあいつがキレたんだよ」 『……』 主神が、どうしようもないと言わんばかりに首を横に振って、ふいっと消えていった。何だよあいつ。腹立つな。 ぽつん、と夢の中に残されて溜息をつく。耳の奥に、リュートの持つ戦錫杖の金属音が、聞こえた気がした。

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