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第32話*
二学期の期末テストが終わって、冬休みが来た。
相変わらずの山のような宿題。リュートはほどほどに手を付けるつもりなのだが、ティルから家で一緒にやろうと誘われている。それだけで済めばいいけど、多分無理だろうな。俺も求めてるし。などと思いながら、今日もノイズシュタインの門を潜る。
使用人の皆さんもリュートの来訪に慣れたもので、深く一礼はするが、それ以上干渉しない。ティルの部屋に近付くにつれ使用人がいなくなるのは、もういつものことだ。
「ティル?」
部屋の扉をノックする。入れー、と間延びした声がして、扉を開ける。暖房の効いた部屋に入って視線を巡らせると、ソファに腰かけたティルがいた。
「おう。いつも悪いな、来てもらって」
「ううん、いいよ」
リュートの家だと……やりづらい、というのは聞いているし。無理に自宅で宿題をやりたいとは言わない。
ソファに腰かけると、ティルが頬に口付けた。もう。と言いながらも喜んでいる自分がいる。
「そういやお前と勉強したおかげか、期末テスト点数上がってたわ」
「そうなの?よかったね」
「まあ順位は万年二位だけどな。一位が強すぎて」
「あはは……」
まあ何せリュートは全科目満点だから。一位を取るにはティルも満点を取って同率一位を狙うしかない。ただティルはそこまでするつもりはないらしい。
「この間の進路相談のときに、志望大学言ってきたよ」
「……どこ、言ったの?」
やや緊張しながら、ティルの言葉を待つ。すると、ティルは頭に、ぽん、と手の平を置いて、言った。
「央都大。商学部あるしな」
「っ……!」
「今の成績なら問題ないかもしれんが、念のためにしっかり勉強は続けろって言われたし、また頼むわ」
「うん……!うん!」
同じ大学に行けるかもしれないと思っただけで、心が浮足立つ。あと一年勉強する時間はある。抜かりなく勉強を続ければ、きっと、同じ場所に桜が咲く。
ふと気になったので、リュートはティルに言った。
「留学はいいの?」
以前聞いた、ティルの父親から言われている進路の一つ。同じ大学に進めるのは嬉しいが、ティルはそれでいいのだろうか。
「留学で得るものと大学で得るもの考えたら、わざわざ海外行かなくてもな」
それに、と言葉を続ける。
「寂しがりの恋人もいるし」
「意地悪!」
もう!とリュートがティルの太ももを叩く。はは、とティルが笑って、腕を引かれる。抱き締められて、暫くそうしてティルと熱を分け合う。すると、ティルがすんすんと鼻を鳴らした。
「何か柑橘の香りしねぇ?」
「あ、俺かも」
「何してんだ?」
リュートは自分の手首をティルの鼻先に寄せると、彼はこの匂いだ。と言った。
「母さんが練り香水作ってくれたから、付けてみてる」
「お前のお袋さん……いや、もう驚かねぇけどな」
ふふ、と笑っていると、ティルがもう一度リュートの手首を取って、その匂いを感じていた。
「程よい感じだな」
「香水ほどきつくなくて、俺は気に入ってる」
「お前から何か……そういう匂いがすると、こう、くるな」
「何言ってんの」
手首に、ティルがそっと唇を寄せる。そして手の甲に、手の平に、指に。情事の気配にリュートは待って!と声を上げた。
「ちょ……ティル!宿題!」
「後にしようぜ。俺勃ったわ」
「もう!」
有無を言わさないティル。そうしている間もリュートの指に啄むような口付けを繰り返す。腹の底に煮えた石を放り込んだように、じんわりと身体が熱くなる。
「ティ、ル……」
はぁっと熱っぽい息を吐いて、彼の目を覗き込む。
「指嬲られただけでそんななるのか?」
「だって、唇の感触が……」
よく知っているはずのその柔い感触が指をなぞっていくことが、どうしようもなくリュートを煽る。勝手に鼓動が跳ね上がって、我慢ができない。
「あー。やっべ。駄目かも」
リュートのことをソファに押し倒して、ティルがリュートのズボンのファスナーを下ろして、ベルトを外す。誤魔化しようもなく昂ったそれをそっと触られて、全身がびくりと跳ねる。
「あっ」
「触りたい」
「ん……して」
ティルの大きな手に包まれて、上下に擦られる。先走りで濡れた先端から根本まで。
「あ、あ、ってぃ、るっ……!」
「はっ、可愛い。声、我慢すんなよ」
「あっ、だ、て……!聞こえ……!」
「使用人のこと気にしてんのか?誰もこの辺にいないの、お前も知ってんだろ」
「っ……!」
気にしなくてもいいなら、もっと乱れてもいいのかな。でも、そんなのはしたない。恥ずかしい。どんな俺でも受け止めてもらえると思っていても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「あっ、だ……!めっ、ああっ。出ちゃ……!」
あっという間に煽られて、ティルの手の平にべったりと吐精する。はぁ、はぁ、と荒く息を整え、机の上の箱ティッシュからごっそりとティッシュを引き抜く。それを使ってティルの手を拭いて、無造作にティッシュの塊を机の上に放り出す。
「ティルは……どうする?」
「咥えて欲しい。駄目か?」
「ううん、いいけど……あんま上手じゃないから」
「お前がしてる事実だけでイくの我慢してるくらいだから、ぶっちゃけ上手い下手はあんまり関係ねぇな」
「何それ……」
ソファに足を広げて、自身のそれを出して、ティルが座る。リュートは足の間に入って、床にぺたんと座り込む。
差し出されたそれに、そろそろと指を這わす。ぴく、と上下に動くそれに、ティルも気持ちいいんだなと感じる。上目遣い気味にティルを見上げてから、舌を出して、舌から上になぞっていく。びく、と何度も痙攣するのを感じながら、手の平で玉袋を包む。優しく揉みながら、今度は唇で挟みながら愛撫する。
「っ……早くっ、咥えてくれ……!」
「ん……」
口を大きく開けて、先端を口に含む。毎度のことだが、長さもあって太さもあるので、口はいっぱいいっぱいだ。先端すら溢れそうだなと思いながら、咥えた口の中で先を舌で舐めとる。
「りゅ……と……!」
途切れ途切れに名前を呼ぶ声が愛おしい。ぐっと口の奥まで咥え込んで、顔を上下に動かす。あんまり得意じゃないんだよなと思いながら。
「くっ……!」
我慢しないで、イきたいならイってほしい。もらえるものは、全部俺の物だから。
「っ……りゅ、とっ……!」
ティルが、リュートの頭を引っ掴む。腰を打ち付けるようにリュートの喉奥を犯し、口の中に生臭くもどこか苦いそれが広がった。反射的に飲み込んで、顔を離す。
「……お前、また飲んだのか?」
「うん」
「吐いていいって前から言ってんだろ。んなもん」
「俺がそうしたいから」
「……お前って死ぬ程優等生なくせに、そういうとこ何でそんなにエロいんだよ」
ごそっとティッシュを引き抜いて、ティルがもそもそと後始末をする。それをぼんやりと眺めつつ、自分も口元をティッシュで拭き取って、リュートは言った。
「いつ?」
「は?」
「いつ、最後までしてくれるの?」
「……」
「俺、もう限界でさ。最近自分でするとき」
「うあああああああ!聞かないぞ俺は!」
ティッシュの塊を乱暴に机に放り捨てて、ティルが叫んだ。何で?
「……大学入ったらって、前から言ってんだろ」
「でももう我慢できない」
「抜き合っても駄目なんか?」
「満たされるけど、足りない」
ズボンのファスナーを上げて、ベルトを締めて。リュートは至って真面目にそう訴える。するとティルはつい、と視線を逸らした。
「……俺だって、欲しいよ」
「ティル」
「けど、制服着てるだろ?何か……いいのかなって、考えちまうんだ」
慎重でメンタル乙女な恋人に苦笑いして、リュートは冗談とも本気ともつかない声色で、悪戯に笑った。
「……俺、そのうち襲っちゃうかも」
「やめてくれ。耐えられる自信がない」
ティルもズボンを履き直して、はあ、と溜息をついた。
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