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Chapter2
奈義はシャワーを浴びると
ベッドの上で小さくなって
スマホを見ている紫音に
覆い被さった。
「お待たせぇ〜」
相変わらず口調は軽い。
シャワーを浴びたはずなのに
香水の香りがする様だった。
ーーーあ、キスされる。
そう思ったタイミングで
奈義の唇が降って来る。
ーー誰か待つか。
そう思いながらも紫音は
反射的に目を閉じた。
噛み付いて
貪る様に舌を絡める。
「うぇっ、チョコミントの味。」
「テメェが買ってきたんだろ。」
「うぇ〜っ! 歯磨き粉じゃん!」
「ンッ...知るかよ!」
エアコンと扇風機の音だけが残る部屋で
軽口を叩きながら
2人の影は重なっていく。
奈義はいつでも
気の向くままに紫音を抱いた。
朝だろうが
夜だろうが
昼間だろうが
紫音の意思は関係なかった。
肌がぶつかる湿った音も、
紫音の嬌声も、
古いアパートによく響く。
こんな生活は
かれこれ1年ほど続いていた。
「......ちょ、紫音、
も、ちょい脚広げろって......!」
「......ンッ......無理......!」
「かってぇなぁ、体!」
「んな事......アッまで言ったって...ハ、ァンッ!!」
「ッ......力抜けって〜!」
「ぬ、抜ける......ッかっての!」
息が上がる。
鼓動が跳ねる。
汗が噴き出る。
紫音は奈義にしがみついて
悲鳴とも嬌声ともつかない
声を上げていた。
奈義はニヤッと八重歯を見せると
構わず紫音の足を持ち上げる。
「ンアアァッ!!」
紫音がしがみつく手に力を込めると
慌てた様に奈義の手が紫音の口を塞いだ。
「バカ、声...ハッ...でけぇよ。」
ーー息が......ッ!!
苦しいのと、
痛いのと、
気持ちいいのと。
もう自分でも
何がなんだか分からないまま
涙だけが滲んだ。
締め切った部屋には
2人が体を重ねる音しかしない。
奈義は眉をひそめ絶頂を終えると
ようやく呼吸を落ち着けるように
動きを止めた。
紫音の腹の上に奈義の汗が滴り落ちる。
紫音は夢中でしがみついていた手を緩め、
ゆっくり目を開けた。
奈義と目が合う。
無意識に目を逸らした。
何処かで救急車の音が響いている。
閉じられたカーテンの隙間からは
すっかり群青色になってしまった
空が覗いていた。
一呼吸整えると
奈義は手慣れた様子で
後の処理を済ませる。
「タバコ、タバコ……」
投げ出されたジーンズのポケットから
Marlboroを取り出し
窓を開けながら火を灯す。
夜の生ぬるい風が部屋へ流れ込んだ。
jo malone londonの香りに、
煙草の匂いが混ざっていく。
「外で吸えよ。」
紫音は体を引きずるように
ベッドから立ち上がった。
「へいへい」
と、返事をしつつ
動く気のなさそうな奈義を睨め付けて
バスルームへ向かう。
紫音はシャワーに打たれながら
体に残る赤い鬱血の跡に眉をひそめた。
ーーこのまま何もかも
流れてしまえばいいのに。
赤い跡も。
下腹部に残る痛みも。
でも全部無くせない。
前にも後ろにも行かない。
自分でもよく分からない気持ちだけが
下腹部の違和感の様に残っている。
紫音は鏡に映った自分自身を鼻で笑った。
夜の風は何かを押し込むように吹き込み
そして何処へも行かずに吹き溜まる。
シャワーを終えると
部屋に奈義の姿はなかった。
アイスクリームのゴミと
香水と煙草の香りが残っている。
ーー全部消せれたらいいのに。
紫音はそっと窓を閉めた。
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