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Chapter15

ーーったく何だってんだ。 学園祭当日。 学内外の人でキャンパスがごった返す中、奈義は言いようのない苛立ちを隠せないでいた。 『ねぇ如月君...! 長谷川君どこにいるか知らない?』 『長谷川先輩どこにいるか知りませんか?』 ......どいつもこいつも一体何なんだよ!! んなのオレが知りてぇよ!! 大学生活最後だからって どんだけ紫音とワンチャン狙ってる ヤツが湧いてくんだよ!! 「ねぇ奈義? 何イライラしてんの?」 綾乃が腕に絡みつく。 「別に。オマエに関係ぇねぇよ。」 奈義はその腕を払った。   『もう、終わりにしたい。』 不意にあの日の声が頭を掠めた。 「......チッ。」 何でこんなに腹が立つんだ。 「ひどーい。昨日から変だよ奈義。」 綾乃はくるっと背中を向けて行ってしまった。 ......追いかけるべきなのだろう。 けれど追いかける気にはならなかった。 奈義は煙草に火をつけ 思い切り肺に流し込む。 何もかも台無しになった様に 肺が冷たかった。 出店している模擬店に戻って 打ち込んでみても 『ねぇ長谷川君来てないの?』 と、また何度目かわからないセリフ。 繰り返し耳にする度に イライラは募っていく。 ......またかよ。 目の前には『意を決して来ました』と言わんばかりの女が...... もじもじもじもじ何なんだよッッ!! 「あの、長谷川君って...」 あーーーもうッ!! 「知らねぇっつってんだろォが!!」 あまりの怒号に 一瞬その場がヒリつくように シンとなる。 周囲にはヒソヒソと噂する目と 怒鳴られて泣き出してしまった子を気遣う声が入り混じり始めた。 ーークソッッ!! 逃げるようにその場を後にする。 備品庫の裏手まで来るとうずくまるようにして煙草に火をつけた。 「オイコラ。」 不意に頭上の窓から声が降って来たので見上げると、スギがいつにない形相で見下ろしていた。 窓から飛び降りて来た彼はそのまま 奈義に掴みかかる。 「テメェ何客にピキってんだよ。 頭沸いてんじゃねぇのか!?」 「......。」 「何とか言えよ。」 「......うるせぇ。」 「うるせぇじゃねぇよ。 何であんなつまんねぇ事でキレんの。」 「......。」 奈義は答える事が出来なかった。 「お前も紫音も何かおかしいだろ!! 何があったんだよ!!」 スギは奈義の咥えている煙草を毟り取って 「頭冷やせよバカ!!」 と言って屋台へ戻って行った。 奈義はその背中を横目で眺めるしか出来なかった。 「......。」 一番一緒に楽しみたかった奴とは 一緒に居ない事を選んだ。 たったそれだけの事だ。 ......なのに......。 ......。        『ナギ』 「............ッ!!!」 奈義は弾かれたように辺りを見渡した。 ーー今、呼ばれた......? けれども アッシュの髪はどこにもいなかった。 「...チッ...!」 調子が狂って仕方がない。 ーー少し話てみるか...。 ......そう思っていた。 『長谷川君、女の子と居るって。』 そんな噂を聞くまでは......。 ーーー...... 「だから!長谷川君、 最近女の子とよく出掛けてるってさ!」 そう教えてくれたのは綾乃だった。 ............は?? 頭の中に綾乃の声が何度もこだまして響いていた。 「隣に住んでで何で知らないのよ。」 綾乃はメイクを直しながら鏡越しに奈義を睨め付けた。 「......何でって...。」 「だってクリスマスだよ? 長谷川君だって彼女くらい出来るでしょ。」 そう言ってリップを塗り直す。 もうクリスマスイブまで1週間を切っていた。 あっという間に街の色は クリスマス一色になっていく。 これくらいあっという間に 紫音に話が出来たら良かったのに。 いつもあっという間に動くのは 時間だけだった。 クリスマスイブの朝。 奈義は紫音が誰かと話している声で目が覚めた。 「............。」 女の声が紫音と話している。 「......!」 楽しそうに弾んだ女の声の後に 紫音の足音が遠ざかる。 「......お待たせ......で...した?」 奈義はその足音を追いかける様に 玄関のドアを開けた。 ドアノブを握ってドアを開いたまま 紫音の後頭部が階段を降りて行くのを 呼び止める事はできなかった。 アパートの前には 何度か見かけた軽四が停まっている。 車の前にはウルフカットの 地味な女が立っていた。 ーーあいつか。 紫音は女に歩み寄り カラカラと笑っている。    『こんな関係終わりにしたい』 ーー......クソッ!! 何であんな女の前では 笑ってるんだ!! 奈義はドアノブを握る手に力を込めた。 紫音は女の髪を撫でて 頬を撫でている。 ......。 そして 身をかがめて女と唇を合わせた。 「............。」 チラリと紫音と目が合う。 奈義は目が逸らせなかった。 脳内の信号が全部止まったようだった。 紫音は一瞬だけ目を見開くと、 何もなかったように目を逸らして 当然の様に女の車の運転席へ乗り込んだ。 ーーなんだよ。あの女...。 奈義はその場から凍りついたように 動けなかった。

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