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Chapter25-本編最終話-
Final chapter
「......奈義!?」
紫音は素っ頓狂な声をあげた。
「何でいるんだよ!?」
「何でいるんだよ!?」
思いがけず声が揃う。
「いや、お前!!連絡くらいしろや!!」
奈義はスマホを紫音の鞄の上に投げ、
履いているペインターデニムを捲し上げながらざぶざぶ海へ入り始めた。
「......それはッ......その......!」
「......テメェさぁ!!」
波を掻き分けながら
ズボンが濡れてしまうのもお構いなしに
奈義はこちらへ一直線にやって来る。
「あんまり連絡ねぇから、
マンションまで行っちまっただろうがっッ!!」
ーー......は?
奈義は物凄い形相で唾を飛ばしているが......
ーー今、何て?
「......マンションまで行った!?」
「だからそう言ってんだろ!!」
「......いつ!?」
「さっき!!!」
!?
「......さっき!?」
「だからさっき!!!」
彼の話によると、どうやら、
マンション前で誠一郎を待ち伏せして
紫音と話をさせてくれと殴り込みに行ったらしかった。
誠一郎の事は街で一緒にいる所をたまたま目撃していたとか......。
それにしてもーー。
「マジでそんな事したの??」
「悪いかッ!!!」
「......あっははははッ!!!」
紫音は腹を抱えて笑い始めた。
ってか会えたの奇跡じゃねぇか?
誠一郎は明後日からまた海外へ行くはずなのに!
「『君はアホなのかい?』
......とか言われたじゃねぇか!
この野郎!!!」
「どうせアホだよ!オレは!!」と吐き捨てるように言った奈義は、バツが悪そうに頭を掻いた。
紫音はそんな彼を、
これでもかというくらい笑い飛ばしてやった。
「あー腹痛ぇ...!」
腹が捩れるほど笑ってから、
ゆっくりと奈義の顔を見る。
奈義と目が合った。
「............。」
「............。」
お互いに言葉が出せない。
ーーこういう時って、
何て言えばいいんだ......?
会ったら、
色々言ってやろうと思っていた言葉が
いざ本人を目の前にして、
出てこない。
波の音が、
一段階大きく聞こえる。
ーーそれから、
心臓の音も......。
「......お前を...。」
沈黙を破ったのは、
奈義だった。
「迎えに行ったんだよ。
......笑うな。」
ちょっとだけ拗ねたように奈義は言った。
その顔が、
幼い頃の顔に重なる。
「奈義......。」
紫音は奈義の腕を掴んだ。
ーーそして......。
思いっきり海へ投げ飛ばしてやった。
「遅ッせぇんだよォォッ!!」
派手な飛沫が上がった。
「なッ......!!あぷっ......何......!?」
呆気に取られた顔で身体を起こす奈義。
「バーーーーカ。」
その間抜け面を覗き込んで吐き捨てる。
ざまーみろってんだ。
ーーと、思った瞬間。
奈義の顔が意地悪く笑った。
「うわっ......!!」
海と空が反転する。
その瞬間に
心臓がひゅっと縮まるくらい冷たい海水が
全身を包んだ。
「......ぶはっ......!!この......やろ!!」
体を起こそうとすると
奈義の腕が紫音を引き寄せる。
紫音は倒れ込むように奈義の胸へ
寄りかかった。
息がかかるくらいに顔が近づき
そして、
再び目が合うーー。
冷たい波が肩を掠め、
夕日が顔を紅く染める。
紫音が2回瞬きをするとーー
2人は
どちらともなく唇を重ねた。
撫でるように優しく
噛み付くように激しく
確かめるようにお互いを求め合う。
奈義の手は
しっかりと紫音の顔を両手で包み込んで離さない。
紫音の手もまた、
奈義の頭を抱えて波に逆らった。
涙なのか鼻水なのか海水なのか。
しょっぱくて堪らなかった。
何度も......何度も角度を変えて
喘ぐように舌を絡める。
離れていた時間を埋めるように、
随分長い間2人はそうしていた。
名残惜しそうに唇が離れると
鼻を擦り合わせながら
ふふっと笑う。
2人はもう
ただの幼馴染ではなかった。
「......好きだよ、紫音。」
ーーあぁ......。
「好きだ......。」
ーーどれだけ......
待ち望んだと思ってるんだ......。
全身が粟立つように痺れていく。
ーー俺も。
俺も奈義が好き......。
そう言おうと口を開いた時だったーー
「......ぶぇ......」
「ぶえ?」
「ぶぇっっくしょんッ!!」
紫音は奈義の顔に
盛大にくしゃみを浴びせた。
「お前......ッ!!」
奈義は大きく顔を拭った。
「台無しじゃねぇか!!
......雰囲気ねぇなぁ!!」
そう言うと紫音を海から引き上げる。
「お前どんだけオレに鼻水つけりゃ
気が済むんだよ......。」
呆れたように紫音の前髪を払う。
「だって......さ、寒いッ!」
「その寒い海に投げ飛ばしたのは誰だよ!!」
「ごめッ......!」
「......まぁいいよ。」
奈義は小さく震える紫音の頬を撫でた。
「風邪ひく前にとりあえず実家に帰るか。」
「............うん。帰ろ。」
奈義は紫音の手を引いて
ビーチへ引き返す。
紫音はその手をしっかり
握りしめた。
夕日が海へ沈んでいく。
砕いた宝石を吸い込むようにーー。
HOME -帰る場所-
episode sunset
END
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