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Epilogue1

 「......あきれた。」 ーーまさかとは思ったけど。 紫音は見覚えのありすぎるアパートを見上げて脱力していた。 「お前、まだ此処に住んでんのかよ。」 奈義が自慢の愛車を飛ばして連れて来た場所は、見覚えもくそもない。 あのボロアパートだった。 「............うっせ。いいだろ別に!」 奈義は恥ずかしそうに頭を掻く。 実家で浴びたシャンプーの いい香りがした。 派手な音の鳴る階段を2人で登る。 あまり気持ちの良い音ではないが、 懐かしくて変に気分が高揚した。 けれど同時に、 最後にこの階段を登った時の記憶も 微かに蘇った。 そんな紫音を察したのか 階段を登り切った辺りで、 奈義は急に立ち止まる。 「............無理なら、引越す。 もっと良いところ、探そう。」 紫音は奈義の腕を掴むと 少し複雑そうに笑った。 「......一緒なら、どこでもいいよ。」 奈義は何も言わず頷いて、 紫音の腰へ手をまわした。 2人はゆっくり 紫音の部屋だった場所を通り過ぎ、 奈義の部屋の前で足を止める。 奈義がデニムのポケットへ 手を伸ばしたその時、 「あ」 「え?」 「待って!」 突然、紫音が奈義の手を止めた。 そして、自身の財布から小さな金属の板を取り出した。 「......紫音。それ、まさか...」 「......うん、そう。」 それは、奈義の部屋の合鍵だった。 「............まだ、持ってたのか。」 「うん。一度使ってみたかったんだよね。」 そう言って笑うと、 紫音はゆっくり合鍵を差し込む。 ーーカチャンッ と、小気味のいい音がして 奈義の部屋の鍵は開いた。 ギィッと古い音がしてドアが開き 狭い箱のような空間が2人を出迎える。 「つぅか2人で住めんのか?ここ。」 「とりあえず寝る場所と食う場所が あったらいいよ。」 「ベッド、セミダブルだけど平気?」 「......俺、壁側ね。」 「......。」 奈義の手が 紫音のスーツケースを中へ押しやる。 2人の会話を吸い込むように 部屋のドアは閉まった。

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