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第5話
学食への道々、教授がお互いを紹介してくれた。
彼、秋川稔さんは大学院修士課程の2年生で、時々教授の手伝いをしているそうだ。どおりで見たことがないはずだ。研究棟に籠っている大学院生と、学部の2年生が会う機会はそうそう無い。歳も、僕より4つ年上の24歳だった。
学食で、教授のおごりで今日は唐揚げがメインディッシュのAランチの食券を買い、列に並んだ。Aランチは日替わりで価格が安く、そのわりにはボリュームがあるので学生に人気があり、ランチの乗ったトレイを受け取るまで少し時間がかかった。
ようやく受け取ったトレイに箸と水のコップを乗せて、教授たちのテーブルに向かった。教授の前にはカレーライスの皿が置いて合ったが、稔さんの昼ごはんを見て、僕はプッと吹き出してしまった。
紙みたいに薄いパンにこれまた薄くスライスしたキュウリを挟んだサンドイッチを、指先でつまんでひらりひらりと食べながら紅茶を飲む、という風情の稔さんが、チャーシューをたくさん乗せたトンコツラーメンがたっぷり入った大きなどんぶりを抱えていた。
笑いをこらえて、かえって様子がおかしくなっている僕を不機嫌そうに見ながら、稔さんは箸をどんぶりに突っ込んだ。大きなチャーシューをひと口で頬張り、麺を多めにすくい上げては豪快にすすり込む稔さんの食べ方はとても美味しそうで、僕はついつい見とれていた。
「さっきから何?ニヤニヤこっちを見てるけど」
稔さんが、とうとうしびれをきらせて僕に言った。僕は慌てて首を振った。
「す、すみません。秋川さんみたいな綺麗な人が、そんな美味しそうにラーメンを食べてるのが、なんかすごく良いなと思って…」
「綺麗って…」
稔さんは赤くなって下を向いた。その姿がとても可愛くて、僕も赤くなってしまった。そんな僕たちを、教授が何か言いたげに見ながらカレースプーンをくわえていた。
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