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第15話
そんな多少消化不良気味ではあるが、学内で僕が手を振れば頷き返してくれるようになったし、週に何度か昼食や夕食を一緒に食べたりして、友人関係になって1年、それなりに満ち足りた日々を送っていた。気持ちは募ってきているが先に進むつもりのない僕と、僕に対してどんな感情を持っているのか全然読めない稔さんとは、いつまでかはわからないがこの先も友人のままでいるんだろうと思っていたある日、事件は起きた。
その日、部活が思ったより早く終わったので、僕は稔さんを研究室に迎えに行くことにした。研究室で白衣を着ている彼は絵のように美しく、僕は大好きだった。
秋も深まっていた時期で、外はもう暗くなっていた。研究棟にはひと気がなく、エコのために照明の数が減らしてある暗い廊下はシンとしていた。僕はスニーカーを履いていたので、ほとんど足音を立てることなく、コンクリートの大きな梁や配管がむき出しになった廊下を進んで行った。
以前にも迎えに来たことがあったので、3階の稔さんの研究室にスムーズに着き、ドアノブを握ろうとした時、中から物音がした。僕は思わずドアノブから手を離し、聞き耳を立てた。人の話し声がした。男の声が言った。
「稔、最近歳下の坊やと付き合ってるんだって?」
稔と聞こえて、僕は耳をドアにくっつけた。
「付き合ってない。たまに飯食ってるだけだ」
この声は確かに稔さんだ。
「この頃冷たいと思ったら、新しい男をくわえ込んでたわけだ。そいつはイイのか?」
「だから付き合ってないって言ってるだろう!彼はそんなやつじゃないんだ」
男の下品な物言いに、稔さんが硬い声で言い返した。
「そうかよ。俺みたいなセフレじゃないと言いたいわけだ」
「そんなこと…」
ガタンと音がした。
「じゃあ、健全なお付き合いは歳下の坊やにお任せして、俺とまたセックスしようぜ。身体が疼いちゃってるんじゃないの⁉︎」
中で言い争っているようだ。僕は中に入るタイミングを伺っていた。
「もう、終わりだと言っただろ…っ。やめろっ」
「稔さん‼︎」
僕は部屋に飛び込んだ。机に仰向けに抑え込まれた稔さんと、その上に覆いかぶさっている男が見えた。
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