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第17話

「あいつと付き合ってたんですか」 稔さんの目を覗き込むように見ながら、もう一度聞いた。関係ないと言われたが、聞かずにはいられなかった。拒否されるかと思ったが、稔さんは目をそらしながら、言い訳するように弱々しく呟いた。 「…君と知り合う前だよ。君と初めて会った頃には終わってた」 「セックスもしたんですか」 「そ、それは…、俺だって君よりは大人なんだから、いろいろあるよ」 自分で聞いておきながら、それ以上聞きたくなくて僕は再び稔さんの唇を自分の唇で塞いだ。今度はもう彼も抵抗せず、僕の背中に腕を回した。 研究室のドアに鍵をかけると、部屋の電灯を消した。窓から入る街灯の光や、部屋にある研究用の機械のランプの明かりで、照明を落としても部屋はぼんやりと明るかった。研究室の隅に置いてある古びたソファーに、キスをしながら稔さんを押し倒した。白衣を脱がせ、シャツのボタンを引きちぎりそうに外していると、唇を離して稔さんが言った。 「自分で…外すから。ボタン、飛ばさないで…」 僕は頷きながら身体を起こすと、稔さんの上に跨ったまま自分の服を脱いだ。彼がシャツのボタンをきれいに外すのを待って、シャツの前を開いた。街灯の青白い光に、細い首と鎖骨、肋骨が浮くほどの薄く真っ白な胸に寒いせいか緊張のせいかツンと突き上がっている乳首がくっきりと浮かび上がった。僕の理性の最後の一本が切れ、僕は無我夢中で稔さんの胸に顔をうずめた。 坂下教授の部屋で初めて会ってから、こんな時間を夢想しない日はなかった。何度想像の中で稔さんを抱いたことか。服の上からでも分かる細い身体は、自分の胸に抱くと骨が当たったりするのか。あんまり力を入れると、ポキンと折れてしまうのではないか。美しく怜悧な顔が快感に揺さぶられると、一体どうなるのか。僕はひとつひとつゆっくり確かめるつもりだったが、若さからか、今までの禁欲が解かれたせいか、自分を抑えることが出来なかった。性急にことを進める僕に戸惑い、身体を開いて行くことにしばらく抵抗を示していた稔さんも、いつしか素直に僕に身を委ねて行った。

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