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第21話

「アメリカに留学してた大学院の講師が帰って来るから、研究室の連中を呼んだらしい」 「行くんですか?」 気乗りしない顔で、3枚目のローストビーフをつついている稔さんに聞いた。 「参加メンバーに、仕事のことでちょっと相談したい人がいるから。めんどくさいけど行かなきゃ」 不機嫌にため息をつきながらローストビーフを頬張り、付け合わせのブロッコリーとポテトもフォークでザクザク刺して口に突っ込み、ガツガツ咀嚼しながらスープでのみこんだ。まだ仕事に慣れていないせいか、会うたびに痩せたように見えるので、食欲が落ちてないのが分かると安心する。 「坂下教授に気をつけてくださいよ。あのオヤジ、稔さんに邪な興味があるみたいなんで」 そう言うと、稔さんが苦笑いを浮かべた。 「あの人は何もしないよ。自分で言ってるよりは常識的な人だから。学生に手を出したりしないよ」 「いつあるんですか?」 「明後日、大学の研究室でやるらしい」 「楽しいといいですね」 「うん」 「僕ともデート、してください」 稔さんがフォークを止めて僕を見た。そして、またすぐ皿に視線を落とすと小さな声で言った。 「…すぐ、すぐに会えるようにするから」 「はい、僕も時間作ります」 稔さんが、ほんのり赤くなってウィンナーソーセージを口に押し込むのを、僕は幸せな気分で見ていた。

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